老化は病気ではなく、したがって少なくとも現在のところ老化を“治療”し、その進行を止めることはもちろん“防止”することも“予防”することもできません。世の中で「老化予防」という言い方が行われていますが、火災予防だとか風邪の予防などと違って、老化の場合はそれをなくすことが目的ではないので誤解を招きやすい表現です。
しかし老化過程に介入してブレーキをかけて遅らせることは可能です。
介入(intervention)とは、ある過程に手を加えてその進行に影響を与えることです。軍事介入とか政治介入というように使われますが、この場合自国あるいは自分のグループに都合のいいように事態を変化させるということです。同様に老化介入とは老化を遅らせるという有益な変化を起こさせるという意味です。
老化介入の目指すところは二つあります。一つは文字通り老化(加齢による生理機能の低下)を遅らせること、もう一つは寿命を延長すること、です。動物モデルを使った研究では後者を問題にしていることが多い。
では老化介入について考えて見ましょう。
まず、一般に喧伝されている老化介入方法には効果が科学的に証明されていないものが多く、専門家とみなされている人たちの意見であっても注意が必要です。
「老化のメカニズム」で詳しく説明するように老化の進行には活性酸素が重要な寄与をしていると多くの老化研究者が考えています(少数ながら反論を唱えている論文もあります)。そのため抗酸化ビタミン(ビタミンCやE)や抗酸化物質(ポリフェノールなど)の摂取が薦められています。しかし、話はそう簡単ではありません。