老化の研究には下図17に示すような様々の生物が使われています。
生物種としてのヒトの最長寿命はおよそ120歳くらいと考えられています(100歳以上の日本人の寿命データに基づく権藤恭之博士の推定では男性115歳、女性122歳)。実験室で飼育されているネズミ(ラット・マウス)の寿命は系統によって異なりますが、長くても3年から4年です。ハエも種類によって違いますが1ヶ月から3ヶ月生きます。
下図13はヒト・マウス・ハエ・線虫の加齢と生存率の関係をそれぞれの種の大半の個体が死亡する最長寿命を基に、時間スケールを揃えて表わしたものですが、ほぼ同じ曲線にそって生存率が低下することが分かります。
ヒトと比べてマウスは約30倍、ハエは約120倍、センチュウは約400倍速く老化が進行することをうかがわせます。 12ヶ月齢(1歳)のマウスはヒトでは30歳くらい、24ヶ月齢(2歳)では60歳くらいに相当することになります。
図8に示すようにラット、イヌおよびヒトにおけるがんによる累積死亡率の加齢変化は、時間軸のスケールをずらせてみるとほぼ同じ形の曲線を描き、ラットはヒトの約30倍、イヌは5.5倍の速さで死亡率が高くなっています。 この値はそれぞれの動物のおよその平均寿命、すなわち30カ月(2年半)、15年、80年の間に倍率にほぼ一致します。この他にも免疫能の低下、骨格筋の萎縮、DNAやタンパク質の酸化傷害などの加齢変化がマウスやラットでは、ヒトの約30倍の速さで起こっていることがわかっています。 これらの事実は、種を越えた共通の老化のメカニズムが、それぞれの種に固有の速さで進行することをうかがわせます。しかし、その違いが生ずる仕組みは不明です。