老化のメカニズム

生体分子に起こる加齢変化

02-DNAの損傷と修復

活性酸素は、DNAを構成する塩基と反応して酸化修飾することがあります。
比較的多い酸化修飾塩基である8‐ヒドロキシグアニンは、核DNAの場合、グアニン塩基10〜100万に1個程度存在します。この程度の少ない修飾でも、細胞をがん化させる可能性があります。数が増えれば、遺伝子の機能に影響することも考えられます。 
活性酸素が多く産生されると考えられるミトコンドリアのDNAの場合、酸化傷害は核DNAの数倍〜10倍 にもなると報告されています(図21)。

こうした事態に対処するために、細胞には傷害DNAを修復する機能がそなわっています。
多くの場合、酸化傷害もそれ以外の傷害も修復酵素によって元の形に戻されて、大事には至らないで済んでいます(図15−1)。

しかし、この機能が低下すれば、危険は増大します。実際、寿命の短い動物では、DNA傷害修復活性が弱いという報告や加齢とともに活性が低下するという報告があります 。 傷害が適切に修復されなければ細胞が突然変異を起こしてがん化したり細胞機能が損なわれたりする可能性があります。

私たちの老齢ラットを使った研究では、定期的な運動がDNA修復活性を高めるらしいことが分かりました (図15−2) 。

さらに最近、核とミトコンドリアにおいて加齢で増加したDNA酸化傷害が同様の運動処方で減少することが判明しました(図15−3)。 その減少とともに核のDNA修復酵素活性が上昇していました。DNA修復活性の上昇は、運動によってがんのリスクが低下することの一因になっているかもしれません。

fig15-3.gif

DNA修復活性の運動による増強は筋肉ばかりでなく運動の影響を直接受けにくいように見える肝臓でも見られています。 同様のことは異常タンパク質分解酵素プロテアソームの活性についても当てはまります。 運動の全身的な有益作用と関係しているかもしれず興味深いことです。 これは異常タンパク質分解酵素プロテアソーム活性についてもあてはまります。

 

 

 

HOME
老いとは何か
老化と加齢
老化モデル動物
個体を構成する細胞
老齢人口の増加
老化と遺伝子
老化とエピジェネティックス
老化介入・老化制御
老化介入
摂取カロリーと老化
カロリー制限はヒトの老化を遅らせるか
レスベラトロールの"寿命延長・抗老化作用"についての見解
NMNは夢の若返りサプリメント?
“脂肪を燃やす”
定期的な運動あるいは身体活動と老化
運動ホルミシス:運動の抗老化作用メカニズムー有益な活性酸素
運動による認知障害の改善
活性酸素と老化の関わり
環境とライフスタイルの影響
生活環境と老化
高齢者の自立能力とその変化
抗老化“酵素健康法”の真偽
テロメアをめぐる話
テロメアの長いヒトは長生きか
老化のメカニズム
老化のメカニズムに関する学説
生体分子に起こる加齢変化
01-活性酸素とミトコンドリア
02-DNAの損傷と修復
03-生体膜におこる変化
04-異常タンパク質の蓄積
05-異常タンパク質は何故増えるのか?
老化が関係する病気、高齢者の病気の特徴
活性酸素が関与すると考えられている老化関連病態
 動脈硬化
 糖尿病合併症
 白内障
 アルツハイマー病
 パーキンソン病
 虚血・再灌流
質問と回答
質問と回答 1
プロフィール
プロフィール
講演会等の予定
Link
老化老年病関連リンク