老いとは何か

高齢者人口の増加

近年、日本人の平均寿命が著しくのび、一般に百寿者といわれる100歳以上の老人の数も急速に増え続けて、2007年には、3万人を越えました(図2)。

図3に示すように、1963年に厚生省の調査が始まって以来、現在までのところ百寿者の数は年々指数関数的に増え続けています。たとえば、1904年(明治37 年)生まれの約144万人のうち、2004年(平成16年)に100歳になった人は11,911名です。男女別に見ると女性は71人に一人、男性は369 人に一人が100歳に達したことになります。この数は2006年には、それぞれ34人と161人に一人と倍増しています(権藤恭之:老人研News 2007年1月号、図4)。百寿者の数は今後も増え続けることは間違いありません(2009年9月の厚生労働省の発表では、百寿者は40,399名に達するということです)。

百寿者の数は世界の先進国でも増加しています。寿命疫学の大御所Vaupelらは、現在の平均寿命の延伸が続けば、多くの先進国で2000年以降生まれのヒトの多く(most babies born since 2000)が100歳に到達できるだろうという楽観的な見通しを発表しています(Christensen et al. Lancet 374: 1196-1208, 2009)(この論文については他の専門家から批判意見が寄せられている(Olshansky他Lancet 375: 25-27, 2009)。

100歳以上の超長寿者(百寿者)数の増加に象徴されるように、日本人の平均寿命は急速に伸びて来ましたが、高齢人口の増加により、様々な医学的・経済的・社会的な問題が浮かび上がって来ました。

このような背景の中で、高齢期をいかにして健康に過ごすか、自立した質の高い生活を送るかといったことに人々の関心が集まっています。医学の分野では単に寿命を伸ばすのではなくQOL(quality of life、生活の質:「高齢者の自立能力とその加齢変化」参照)の向上を目標として生活指導や治療を行うという考え方が広がっています。

百寿者が増えたということは、最長寿命が延びたことを意味するものではありませんが、元気なお年寄りが増えるというよろこばしいことも起こっています(下図19)。

生物種としてのヒトの寿命限界は一般に120年くらいと考えられていますが、権藤恭之先生が日本の100歳以上の超長寿者の死亡統計から推定した数字では女性が約122歳、男性が115歳となっています。偶然の一致だと思いますが、研究者の間で認められている人類の最長寿命は122歳(女性)です(「Q and A」のQ11参照)。ちなみに、動物の最長寿命はチンパンジー:40-50年、イヌ:15−20年、ネズミ:3−4年、 ハエ:1ヶ月-3ヶ月とされていて、動物の最長寿命は種によってかなり一定しています。 つまり、種の寿命は遺伝的にほぼ決まっていると言えます。

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