生体膜(図15−4)は、細胞の外側を構成しているだけでなくミトコンドリアなどの細胞内小器官の構成物としても重要な役割をもっています。細胞膜の脂質の中にはリン脂質として不飽和脂肪酸エステル(少々不正確ですが、以下、単に不飽和脂肪酸といいます)が多く含まれています。リン脂質の中に適度に不飽和脂肪酸が含まれていることは膜の柔軟性のために必要です。しかし、不飽和脂肪酸は酸化傷害を容易に受ける分子でもあります。
活性酸素ラジカルやその他のラジカル(「ラジカル」の項参照(リンク))と不飽和脂肪酸との反応の結果脂肪酸ラジカルが出来て、それが酸素と反応したものが過酸化脂質です。 過酸化脂質ができると生体膜の機能(柔軟性など)が変化するばかりでなく、それから生じる反応性の高いアルデヒドが周囲のタンパク質などを修飾する危険があると考えられています。細胞や血清中の過酸化脂質は、加齢で増加すると言われています。 不飽和脂肪酸は酸化され易い(ラジカルと反応し易い)ので脂溶性のビタミンE(VE)が膜の中に存在して酸化を防いでいます。 すなわち、VEは自らラジカルと反応してラジカルが不飽和脂肪酸と反応するのを未然に抑えています。
この他、加齢によって細胞膜に起こる変化として構成成分の比率の変化があります。 すなわち、リン脂質の中の不飽和脂肪酸エステル対飽和脂肪酸エステルの比率の低下、コレステロール対リン脂質の比率の増加が起こります。これらの変化は、いずれも膜を硬くするので膜機能に有害となる可能性があります。