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![]() 心臓の病気と治療薬病態と治療薬難易度3 虚血性心疾患とその治療
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狭心症治療薬 | |
硝酸薬 | ニトログリセリン/硝酸イソソルビド/亜硝酸アミル/ニコランジル |
アドレナリンβ受容体遮断薬 | プロプラノロール/アルプレノロール/インデノロール/ オクスプレノロール/ブニトロロール/ブフェトロール/ブプラノロール/ ブクモロール/ピンドロール/カルテオロール/チモロール/ナドロール/ チリソロール/アセブトロール/セリプロロール/メトプロロール/ アテノロール/ビソプロロール/ベタキソロール/カルベジロール/ アロチノロール/ニプラジロール |
カルシウム拮抗薬 | ジルチアゼム/ベラパミル/ニフェジピン/ニソルジピン/ニトレンジピン/ エホニジピン/アムロジピン |
冠血管拡張薬 | ニコランジル/ジピリダモール/トリメタジジン/トラピジル |
抗血小板薬 抗凝血薬 |
アスピリン/チクロピジン |
その他 | アンジオテンシン変換酵素阻害薬 |
冠動脈が閉塞して血流が途絶した心筋組織が壊死を起こし、不可逆的な傷害が残った病態が心筋梗塞です。発症してから1−2ヶ月以内を急性心筋梗塞、それ以降を陳旧性心筋梗塞とよびます。心筋梗塞の発作時には全胸部の痛みが数時間以上持続し、硝酸薬では痛みは消失しません。めまい、嘔吐、呼吸困難、不整脈などが起こり、さらに心原性ショック、心破裂などに至ると命にかかわります。冠動脈閉塞の原因として粥腫性プラークの破綻と冠動脈攣縮があります。動脈硬化の進行により冠動脈壁にできる粥腫性プラークは脂質を繊維皮膜が取り囲んだものです。この繊維皮膜が破れると血小板があつまり、血栓が形成されます。冠動脈攣縮 coronary spasm は冠動脈が強く持続的に収縮して血管の内径が著しく狭まることで、神経興奮や各種生理活性物質が原因です。冠動脈攣縮に関与する生理活性物質の多くは血小板凝集作用を持っており、血栓形成も促進します。血栓が小さかったり短時間で溶解して消滅した場合は血流障害は軽度で、不安定狭心症にとどまりますが、血流の途絶が持続すれば心筋梗塞となります。一般に20分以上の血流途絶で心筋壊死に陥るとされています。心電図波形は T波増大→ST上昇→陰性T波出現、と経時的に変化します。心筋が壊死を起こしてから2−3時間後にはミオグロビンが、数時間−数日後にはCK、GOT、LDHなどの酵素が細胞から漏れ出して血液中に検出されるようになります。
発作直後は絶対安静が必要です。酸素吸入を行い、胸痛を鎮めるためにモルヒネを静脈注射することもあります。心室性不整脈が発生した際にはリドカインを静脈注射し、徐脈性不整脈に対してはアトロピン静脈注射や心臓ペーシングを行います。容態が落ち着いた後に再灌流療法coronary reperfusion を行い、血流を再開させて壊死の進行をくい止めます。現在はPTCAが第一選択とされていますが、ウロキナーゼ やt-PAなどの血栓溶解剤を用いる方法もあります。再灌流療法は発症後6時間以内に行うと効果が高いとされていますが、再灌流直後に再灌流性不整脈reperfusion-induced arrhythmiaが誘発されたり、収縮機能が回復しない場合もあり、虚血再灌流傷害ischemia-reperfusion injuryと呼ばれています。薬物による虚血心筋の保護としては硝酸薬の点滴静注が最も広く行われます。アドレナリンβ受容体遮断薬やカルシウム拮抗薬も心筋の酸素需要を低下させることが期待できますが、心機能をさらに低下させてしまう危険もあります。まだ動物実験段階ですが、心機能を低下させずに虚血再灌流傷害を軽減する薬物もいくつか見出されています。心筋梗塞発作後の入院早期での最大の死因は心臓のポンプ機能が損なわれる心不全です。これに対しては利尿薬や血管拡張薬、強心薬が用いられます。また心臓のリモデリングを防ぐ目的でアンジオテンシン系抑制薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬が使われます。