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![]() 心臓の病気と治療薬病態と治療薬難易度3 心不全と治療薬
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心不全治療薬 | ||||
強心薬 | cAMPを増加させる薬物 | β受容体 刺激薬 |
カテコラミン | ドパミン/ドブタミン/ ドカルパミン |
非カテコラミン | デノパミン | |||
ホスホジエステラーゼ阻害薬 | アムリノン/ミルリノン | |||
強心配糖体 (ジギタリス) |
ジゴキシン/メチルジゴキシン/ジギトキシン/ デスラノシド/ ラナトシドC/プロシラリジン |
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その他 | ピモベンダン/ベスナリノン | |||
血管拡張薬 | 硝酸薬 | ニトログリセリン/硝酸イソソルビド | ||
その他 | ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド/ アドレナリンα受容体遮断薬 |
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利尿薬 | チアジド系利尿薬 | ヒドロクロロチアジド/ヒドロフルメチアジド/ ベンチルヒドロクロロチアジド/トリクロルメチアジド/ メチクロチアジド/シクロペンチアジド |
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ループ利尿薬 | フロセミド/ブメタニド/ピレタニド/アゾセミド/トラセミド/ エタクリン酸 |
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カリウム保持性利尿薬 | スピロノラクトン/カンレノ酸カリウム/トリアムテレン | |||
その他 | アセタゾラミド | |||
神経・体液性因子 に対する拮抗薬 |
アンジオテンシン変換酵素阻害薬 | エナラプリル/リシノプリル | ||
アンジオテンシン受容体拮抗薬 | ロサルタン/カンデサルタン/バルサルタン | |||
アドレナリンβ受容体遮断薬 | カルベジロール/メトプロロール |
以前は、心不全とは心筋収縮力の不足であると理解され、その治療にはもっぱら強心薬が用いられていました。これは急性心不全の際に血液循環を確保し、患者の命を守るためには現在でも有効な考え方です。しかし、最近の米国における疫学的調査により強心薬を服用した心不全患者は、むしろ寿命が短縮しているとの結果が得られ、強心薬の長期使用が考え直されるようになりました。このことから、最近は心不全の初期段階から血管拡張作用のある薬物を用いる例も増えています。
急性心不全から慢性心不全に移行する際には、壊死により脱落した心筋細胞の隙間を埋めるために繊維芽細胞が増殖して心臓が肥大し、結果的には心筋収縮力の低下につながります。これは心臓のリモデリングと呼ばれる現象で、心筋組織のアンジオテンシンIIをはじめ、エンドセリン、バソプレッシン、ナトリウム利尿ペプチドなど様々な生理活性物質が関与していることが明らかになりつつあります。心不全はこれらが複雑に関与し、循環系全体の状態が悪化する症候群であるとも理解できます。アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬は心臓のリモデリングを抑制し、慢性心不全の進行を遅らせることが大規模臨床試験から明らかになり、心不全治療の初期から使われる例も増えてきました。またアドレナリンβ受容体遮断薬は心筋収縮力を低下させるため通常は心不全がある場合に投与するのは危険ですが、最近ではアドレナリンβ受容体遮断薬(カルベジロール)をきわめて少量投与すると心不全が改善される場合があることも知られています。心不全治療のための様々な新しい治療法が検討されていますが、治療の視点が"いかに心筋を刺激してよく働かせるか"から、"いかに心筋の機能を長期的に維持するか"に移りつつあるともいえます。