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バーチャルラボラトリ 心筋−心臓は電気とカルシウムでイオン動いている!−
東邦大学 薬学部薬物学教室  
田中 光 行方 衣由紀 M口正悟
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心筋の普遍性と多様性

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種差−動物種による違い− 心筋の発達変化 心臓の部位による違い

種差−動物種による違い−

難易度2

心筋が収縮する際には、まず活動電位が起こり、カルシウムトランジェントが発生して、収縮タンパクが活性化されて収縮が起こります。これはすべての動物のどの心筋細胞でもほぼ共通の基本パターンであるといえます。しかし、心筋の性質を動物種、発達段階、心臓の中での部位に注目して細かく調べていくと、実は様々な性質の違いがあることがわかってきました。

動物の様々な性質はその動物の大きさと深く関係していることが知られています。
心臓が一度拍動してから次に拍動するまでの時間(心拍数の逆数)は体重の4分の1乗に比例する。つまり小さい動物の心臓ほど早く拍動するという法則が成立しています(本川達夫氏著“ゾウの時間ネズミの時間“)。ゆっくり拍動する大きな動物の心臓と、頻繁に拍動する小さな動物の心臓とでは一回の収縮にかけることのできる時間が違います。心拍数の高い動物の心筋の収縮は心拍数の低い動物の心筋の収縮よりも素早いものになっています。この原因として、心筋の種類によって収縮を起こす活動電位やカルシウムトランジェントの性質にも違いがあることがわかってきました。

哺乳類の大きさと1分間あたりの心拍数の比較

【 例えば 】
人間(心拍数60−100程度)やウサギ、モルモット(心拍数200程度)の心臓の活動電位は脱分極している時間が数百ミリ秒持続しますが、心拍数が400−600のネズミの心臓では数ミリ−数十ミリ秒しか持続しません。心拍数の高い動物では一回の活動電位を素早く終了させて次の活動電位の発生に備えているように見えます。この活動電位の波形の違いをつくり出している最大の原因はカリウムチャネルの性質の違いです。

【 カリウムチャネルが開くと 】
再分極が起こって活動電位が終了しますが、ウサギやモルモット心筋のカリウムチャネルが開くのに数百ミリ秒の時間がかかるのに対し、ラットやマウスのカリウムチャネルは数ミリ−数十ミリ秒で開きます。この時間差が活動電位の持続時間の差に反映されているのです。活動電位に続くカルシウムトランジェントも心拍数の高い動物ほど時間経過が速くなっています。カルシウムトランジェントの時間経過を決める要因は複雑ですが、活動電位により引き起こされるCa2+-induced -Ca2+-release の時間持続や、カルシウムイオンを細胞質から取り除くしくみに違いがあることがわかってきました。マウスやラットではモルモットやウサギと比べて筋小胞体機能が高く、また、カルシウムトランジェントが発生した直後にカルシウムイオンを細胞外にくみ出すNa+-Ca2+交換機構の働きが高いことがわかっています。

これらにより、マウスやラットの心筋では素早い収縮・弛緩が可能になっていると考えられます。

心室筋の収縮力と活動電位 モルモットとマウスの比較
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