手賀沼は、昭和21年(1946年)に国営印旛手賀沼干拓建設事業が着工され、昭和43年(1968年)に完成した。圃場整備に伴い、白井市名内・今井・平塚地区、印西市白幡・浦部地区の田んぼは、乾田化された。現在、圃場整備により、湿地と湿田の減少し、ニホンアカガエルの生息地は、限られた場所になってしまった。
名内・平塚・白幡地区(阿夫利神社下)では、今もカモ猟が行われ、冬季には、カモ場が作られる。水をためるため、この地区のニホンアカガエルは、カモ場を産卵場所として利用していることがわかった。
ニホンアカガエルは、森林で生活し、湧水のある湿田でオタマジャクシの時期を過ごす。このため、ニホンアカガエルの卵塊調査は、生息しやすい環境かどうか、森林と湧水の健全さをはかる指標となる。卵塊数の変化は、周辺環境の変化をとらえられ、また、卵塊数よりニホンアカガエルの個体数を推定することができる。
白井市自然環境調査(予備調査)2003年では、名内地区でのニホンアカガエルの生息が確認された。その後、ニホンアカガエルの卵塊数を継続して調べた。
調査期間は、2004年~2008年の各年1月20日~3月31日である。
白井市名内では、土水路で産卵し、50個前後の卵塊数で推移している。このことから、ニホンアカガエルにとって安定した生息場所であるといえる。
印西市白幡地区(阿夫利神社下)では、2008年現在では、5箇所のカモ場が使用されている。この地区でのニホンアカガエルの産卵は、カモ場にたよっているのが現状であり、カモ猟が終わり、水がぬかれたり、日照り続きになると、卵塊やオタマジャクシが死滅してしまう。
また、2006年から白幡地区(阿夫利神社下)では、森林の伐採が行われ、資材置き場や残土置き場になった。そのため、湧水の減少によって、卵塊が全滅した年もあった。森林の伐採と開発が、森林のもつ保水力を低下させ、湧水が枯渇したと思われる。
2007年秋には、湿地が埋め立てられ、阿夫利神社下の卵塊数は2007年では326個から2008年には89個と激減した。谷頭部の埋め立てによって、生物資源が失われ、この地域の生態系ピラミッドの質と量が脆弱になったことを示している。
ニホンアカガエルの生息環境を保全するためには、谷津田に隣接する林の保全が、湧水を保全することになる。さらに、湿田を含む谷津田の保全と、カモ場による産卵場所の確保と上陸時までの水の確保が必要である。また、ニホンアカガエルの生息環境の保全が、高次消費者である猛禽類の生息を維持することになる。高次消費者が繁殖できる環境を維持することこそが、生物多様性に富む地域となる。
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図1 ニホンアカガエル調査地点 | |||||||||||||||||||||
表1 名内地区でのニホンアカガエル卵塊数
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名内谷津 | ||
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名内![]() 上流 | 名内![]() 中流 | |
2004年 | 32 | |
2005年 | 1 | 53 |
2006年 | 78 | |
2007年 | 48 | |
2008年 | 51 |
表2 白幡地区(阿夫利神社下)でのニホンアカガエル卵塊数(個) 2004-2008年 | |||||||||||
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NO.0-1 カモ場 | NO.0-2 カモ場 | NO.1 四段カモ場 | NO.2 | NO.3-1 カモ場 | NO.3-2 | NEW カモ場 | 池 | ||||
湿地 | カモ場 | 水田 | |||||||||
2004年 | 37 | 17 | 0 | 0 | 54 | ||||||
2005年 | 6 | 68 | 21 | 0 | 0 | 95 | |||||
2006年 | 14 | 0(158) | 72 | 0(41) | 0 | 86 | |||||
2007年 | 12 | 16 | 100 | 326 | 37 | 0(95) | 0(18) | 0(14) | 0 | 491 | |
2008年 | 17 | 42 | 139 | 16 | 6 | 67 | 0 | 0 | 2 | 0 | 289 |
【阿夫利神社周辺の様子】 | |
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↑2006.2.2 林が残土置き場になった。 |
↑2006.3.22 斜面林の林が切り倒された。 |
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↑2007.3.29 2006年秋には、草が刈られた。草が刈られたことによって絶好の産卵場所となった。2007年の卵塊数は、326個であった。 |
↑2008.2.18 2007年秋に残土が入り、湿地が埋め立てられた。卵塊数は、2007年326個、2008年89個に減少した。 |
【阿夫利神社下NO.1四段カモ場】 | |
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↑2006.3.22 カモ場の水が干上がる 卵塊やオタマジャクシが絶滅した。 |
↑2008.3.25 カモ場で産卵。卵塊の様子 |
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