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東邦大学 薬学部薬物学教室  
田中 光 行方 衣由紀 M口正悟
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心臓の電気現象

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特殊心筋、刺激伝導系

難易度2

房室結節 atrio-ventricular node(A-V node)

房室結節は組織学的には田原により見出され、”田原の結節”とも呼ばれています。前述のように、ここ房室結節では特殊な電位変化が起こっており、ヒス束での伝導速度が遅いこととともに心房から心室への伝導を遅らせています。これは心房収縮よりも遅れて心室収縮が起こるために必要な機構なのですが、病的な状態では脱分極が閾値(いきち)に達しないことがあります。すると活動電位は心室に伝わらず 房室解離 A-V dissociation が起こります。房室結節にある機構はその意味で安全率の低いものといえます。

この部位にも自律神経の影響が及んでおり、ノルアドレナリンの作用で房室結節での伝導速度が速くなり、アセチルコリンにより抑制されます。

これらの作用を 正または負の変伝導作用 positive or negative dromotropic action と呼びます。

プルキンエ線維 Purkinje fiber

プルキンエ線維は始めは太い線維として走っています( 右脚、左脚 )が、次第に枝分かれして心室の内壁を薄い層となって網の目状に覆います。細胞は大きく、筋原線維が比較的少なく、グリコーゲンやミトコンドリアが豊富である、などの特徴を示します。

プルキンエ線維を活動電位が伝わる速度は極めて速く、心室の同期的収縮に重要な役目を果たしています。これはプルキンエ線維の細胞に起こる活動電位の脱分極速度( 立上り速度 )が極めて高いことに起因します。(例えばイヌでは500V/sec程度)

また、プルキンエ線維の根幹部すなわち、右脚・左脚部には潜在的に歩調取り電位を有する細胞があり、例えば房室解離の状態では細胞が自動中枢となって心室を収縮させていると考えられます。

自動能のイオン機構−洞房結節とプルキンエ線維の自動能の比較

田原

田原 淳(たはら すなお)(1873−1927) 九州帝国大学(現九州大学)名誉教授 病理学者 出身地:大分県
1903年 東京大学を卒業後に私費でドイツへ留学。マールブルグ大学病理学教室でL.Aschoffに師事。
1906年 田原の結節を発見し、”Das Reitzleitungssystem des Saugetierherzens”という論文を発表しました。
”田原の結節”は本来”アショフ−田原の結節”と呼びますが、アショフの名前は省略されることが多く見受けられます。
帰国後、福岡医科大学(現九州大学医学部)の助教授となり、翌年には35歳にして教授に就任、退官後は名誉教授となる。もっと詳しく

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