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東邦大学 薬学部薬物学教室  
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心臓の電気現象

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特殊心筋、刺激伝導系

難易度2

洞房結節 sino-atrialnode(S-A node)

洞房結節の細胞は電子顕微鏡的には筋原線維が未発達であり、核が大きく、ミトコンドリアが少ない、などの特徴を示します。

通常の心筋細胞では隣接細胞に活動電位が発生しない限り静止電位に止まっているのですが、洞房結節細胞では膜電位は他からの刺激なしにひとりでにゆっくりと脱分極し、ある閾値(いきち)に達すると活動電位に移行します。この自動的な脱分極を 歩調取り電位 pacemaker potential緩徐な脱分極 slow depolarization などと呼びます。また、活動電位発生の閾値となる電位を 閾膜電位 threshold potential,TP と呼び、静止電位に相当する最も深い電位を 最大弛緩期電位 maximum diastolic potential,MDP と呼びます。

最大弛緩期電位は通常の心筋細胞の静止電位(約90mV)より小さく、60mV程度です。

洞房結節は心臓拍動の自動中枢とも呼ばれ、ここに1回活動電位が起これば心臓が1回拍動します。すなわち、洞房結節における自動的活動電位発生の頻度が心臓収縮の頻度(心拍数)を決めることになるのです。

 洞房結節での活動電位の変化について

洞房結節での自発性活動電位発生頻度を決める因子

  1. 歩調取り電位の傾き(下図、Part1でa←→bの動き)
  2. 閾膜電位(TP、Part2でc←→dの動き)
  3. 最大弛緩期電位(MDP、Part2でa←→bの動き)
洞房結節での活動電位の変化を示す模式図

 洞房結節の自発性活動電位に対するノルアドレナリンとアセチルコリンの作用

交感神経が活動して、神経末端からノルアドレナリンが遊離して洞房結節に作用すると自発性活動電位発生頻度を高めますが、これは主として歩調取り電位の傾きを高めることによります。

副交感神経の興奮により遊離されたアセチルコリンは主として最大弛緩期電位を増加(より負となる)させ、かつ歩調取り電位の傾きを低下させて自発性活動電位発生頻度を減少させます。

ノルアドレナリンおよびアセチルコリン投与前後の活動電位を比較します。(下図)

洞房結節の自発性活動電位に対するノルエピネフリンとアセチルコリンの作用

このように洞房結節に作用して心拍数を変化させる作用を 変時作用 chronotropic action と呼び、心拍数を上昇させるほうを 正の変時作用、逆を 負の変時作用 と呼びます。ちなみに、心筋収縮力を増減させる作用は 変力作用 inotropic action と呼びます。

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