活動電位の役割−心機能との関連−
難易度2
活動電位の役割−心臓機能との関連
活動電位は心筋収縮の引き金としての役目とともに、心臓の自動拍動の源となり、また各部の心筋を協調して収縮させる働きをしています。心筋細胞のなかにはもっぱらこの役目のみを果たし、収縮にはほとんど関与しないものが存在しており、特殊心筋または刺激伝導系と呼ばれています。
これに対し、もっぱら収縮の機能を果たしている心筋細胞を作業筋または固有筋と呼びます。心臓を構成するのは大部分が固有筋であり、特殊心筋は量的には極めてわずかです。
最も重要な特殊心筋 −洞房結節の心筋細胞−
最も重要な特殊心筋は右心房の上大静脈開口部付近に存在する 洞房結節 sino-atrial
node の心筋細胞です。
- 洞房結節の心筋細胞では他からの刺激なしに自動性の活動電位が規則正しく発生しています。
- この活動電位が周辺の心房細胞に活動電位を発生させ、それが心房全体に伝導し、心房の収縮をおこします。
- 心房の心室寄りには 房室結節 atrio-ventricular
node ( 田原の結節 )があり、この部位では隣接の心筋細胞の活動電位を受けてもすぐには活動電位を発生せず、始めにゆっくりとした脱分極が生じ、それがある閾値(いきち)
threshold に達して初めて活動電位が発生します。
- 続いて活動電位は ヒス束 bundle of His を経て心室に伝わります。
房室結節での特異な活動電位およびヒス束での伝導速度が遅いことが原因となって、心房での活動電位発生から心室での活動電位発生までには時間的遅れが生じます。これを房室遅延と呼びます。
- 心室では刺激伝導系は左右に分かれる プルキンエ線維 Purkinje fiber となっており、これを 右脚 、左脚 と呼びます。
- 次いでプルキンエ線維は細かく分岐して網目状に左右心室内壁を覆います。プルキンエ線維を活動電位が伝わる速度は極めて速く、例えばイヌでは約5m/secです。
したがって、活動電位はひとたびプルキンエ線維にまで到達するとそのさきは非常にはやい速度で心室内壁全体を伝わり、それから作業筋に伝わるという経過をたどるので、心室全体が同期した収縮を起こし、ポンプとしての効率を高めているのです。
上に述べた部位とそこでの活動電位波形を模式的に図に示します。