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バーチャルラボラトリ 心筋−心臓は電気とカルシウムでイオン動いている!−
東邦大学 薬学部薬物学教室  
田中 光 行方 衣由紀 M口正悟
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エホニジピン物語

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L型T型デュアルカルシウムチャネルブロッカーの発見と展開

難易度3

おわりに

 これまでジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は作用時間の長短をもとに分類され、論じられてきましたが、それだけでは新しいタイプの治療薬の特徴を把握するには不十分です。そこで近年、作用部位や作用するチャネルのタイプによるカルシウム拮抗薬の分類が取り入れられてきました。ベラパミル、ジルチアゼムなど心臓と血管とに選択性がないもの、ニフェジピンなどL型カルシウムチャネル阻害に基づく高い血管選択性を有する従来型のジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬、そしてL型カルシウムチャネル以外のカルシウムチャネルを遮断する作用を併せ持つデュアルカルシウムチャネル拮抗薬とに分類する方法です(表2)。
 デュアルカルシウムチャネル拮抗薬にはL型とT型両カルシウムチャネルを遮断するエホニジピンやL型とN型を遮断するシルニジピン (28) が含まれ、いずれも心拍数を低く抑えることによる心保護作用や輸出細動脈拡張に基づく腎保護作用が期待されています。また、私たちはジヒドロピリジン化合物の中には陰イオンチャネルに作用して虚血再灌流傷害から心筋を保護する性質を持つものがあることを見出しています (5, 29)。これからの薬物治療は単に目的疾患の主症状を緩解させるというだけではなく、臓器保護に基づくQOL向上という視点がますます重要になって来ます。これを実現するひとつの鍵が薬剤の作用点の多様性であると思われます。生体内に存在する各種イオンチャネルやトランスポーターの生理的・病態生理的役割の解明と、治療薬の効果の作用点に基づく理解により、より効果的で副作用の少ない薬物治療が可能になることを期待します。

(表2) 作用点によるカルシウム拮抗薬の分類
  作用するカルシウムチャネルの種類 薬剤 血管
拡張
心臓 臨床適用
収縮力 心拍数
非選択的
L型カルシウムチャネルブロッカー
L型
(心臓・血管)
ベラパミル
ジルチアゼム
狭心症・不整脈
(高血圧)
血管選択的
L型カルシウムチャネルブロッカー
L型
(血管)
ニフェジピン
など
++ 高血圧症
(狭心症)
デュアル
カルシウムチャネルブロッカー
L型+N型 シルニジピン ++ ↓−→ 高血圧症
(狭心症)
臓器保護への期待
L型+T型 エホニジピン ++ ↓−→

『エホニジピン物語』を創った東邦大学薬学部薬物学教室のメンバー(年代順)

大学院生

松田智行 増宮晴子 関根俊行 四十九俊徳 谷口晴頼 加瀬準也 行方衣由紀 武田健太郎
中村英生 古御門千紗 島田英朗 小川亨 恒岡弥生

卒業研究生

寺田美由紀 鈴木麻里子

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