松田智行 − 日産化学生物科学研究所→調剤薬局
平成5-6年度 修士課程
はじめまして。私は修士課程終了後に企業の研究所に10年間勤務し、それから現在の職場である調剤薬局に転職しました。それぞれについて、少しずつ書かせて頂きます。
学生時代
私は大学3年になるまでは研究よりも病院の臨床薬剤師に興味がある学生でした。当時、臨床薬剤師は医療現場であまり認知されていない職場でありましたが、何となく惹かれるものを感じていました。ところが、3年になり薬理学を学び、薬がなぜ効くのか?という事に興味がわき、薬物学教室を希望しました。私が入った頃、卒業研究生は18人いました。日々とても楽しく、時には徹夜で実験をしたものです。それも教室の先生方、研究員、院生そして同期の仲間たちのお陰であると今も思っています。たいへん自由な環境下で心筋活動電位測定、パッチクランプ法、カルシウムイメージングと何でも経験させて頂きました。修士論文は"共焦点レーザー走査顕微鏡による心筋細胞内カルシウムの画像化の試み"というタイトルでまとめました。高速走査型共焦点顕微鏡メーカーとの共同研究により、心筋細胞内カルシウムイオンの画像化に成功し、心臓の拍動や病態との関連を考察したものです。
研究職時代
先生のご紹介により、企業の研究所に就職する事ができました。研究所でも運良く循環器関連の仕事をやらせて頂きました。学生時代に学んだ事と同じ事が就職後も出来る方はほとんどいないかもしれませんが、私は学生時代に学んだ事をそのまま活かす事ができとても充実していました。当時社内には心筋電気生理を専門にしている方がいなかったので、日々プレッシャーとやりがいとを感じながら過ごしておりましたし、就職後も度々薬物学教室の先生方には助けて頂きました。
仕事の内容としては、薬剤コンセプトを立案してテーマ化すること、薬剤シードの発掘、シードからリード化合物へのステップアップ、候補化合物の絞り込み研究、候補化合物の作用機序研究など多岐にわたっていました。
現在(調剤薬局薬剤師として)
現在は研究所を退職し、実家のある田舎町に戻って調剤薬局に勤務しています。当初は研究所とは全く違う職場であるように思えましたが、色々なところでそれまでに得てきた知識と経験が役に立つと最近は感じています。患者さんは一つの疾患だけを抱えている事はまれであり、様々な疾患にかかっています。それぞれで使われる薬剤が沢山ありますが、それぞれの薬剤の作用機序を考える時や、薬物相互作用を考える時にはとても役立っています。まだまだ勉強段階ですが、今後も患者さんのための服薬指導ができるよう勤めて行きたいと思います。研究所時代に自分も開発に関与した薬剤を、薬剤師として自分の手で患者さんに届けるのが楽しみです。
薬物学教室は、とても自由に研究を行える場であると思います。自由である分、スタッフの協力のもと、自分で色々と考えなければならない局面も多く出てくると思います。その一生懸命考える事を惜しまず、大切にして、貴重な学生時代を過ごして下さい。必ず将来ためになると思います。