不応期と不整脈
難易度2
不整脈の成因
成因1.異所性自動中枢
通常の状態では洞房結節に発生する規則正しい自発性活動電位が心臓全体を収縮させる命令となって伝わります。しかし、何らかの異常で自発性の活動電位を発生する細胞が洞房結節以外の部位に生ずることがあります。これを
異所性自動中枢 ectopic focus と呼びます。これに対比させる場合には洞房結節のことを 正所性自動中枢 と呼びます。
異所性自動中枢が出現すると正常の命令以外のが伝わってくることになり、これは期外収縮などの不整脈となります。異所性自動中枢が1個のみならず、多数個出現する場合もあり、さまざまの種類の不整脈の原因ともなりうるのです。
もちろん、異所性自動中枢からの命令が活動電位を発生させ得るのは、正常の活動電位による不応期から脱した細胞のみです。したがって、不応期が短縮すれば異所性自動中枢による不整脈は発生しやすくなり、逆に延長すれば不整脈出現の可能性が減ることになるのです。
成因2.Re-entry(興奮旋回)
図に示すような経路が存在すると仮定しましょう。
正常の場合 : 矢印で示すように興奮が伝わります。
BとCでは興奮は2方向に分かれ、Dで両方から進んできた興奮は相互の不応期にかかるため、ここで消失します。すなわち、1回の命令は各部位を1回興奮させるのみなのです。
異常の場合 : E点に何らかの病変があり、A→C方向には興奮が伝わらず、C→A方向には伝わるという状況ができたとしましょう。
興奮はA→B→Cと進みEを通過して再びAに至ります。すなわち、A点は1回の正常命令により2回以上興奮するので不整脈となるのです。
この説が成り立つ条件 :
一方向き伝導障害が生じること
興奮が戻ってきた時A点は不応期を脱していなければならない
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成因3.誘発活動 triggered activity
誘発活動は不整脈の成因として比較的最近重視されるようになったメカニズムです。活動電位の再分極の初期の段階、あるいは再分極終了直後に小さな脱分極が起こることがあります。前者を
早期後脱分極 early afterdepolarization(EAD) 、
後者を 遅延後脱分極 delayed afterdepolarization(DAD) と呼びます。これらの脱分極が引き金となって活動電位が発生することがあり、それを誘発活動と呼びます。
この誘発活動を不整脈の成因と考えるのです。EADのメカニズムはまだ不明な点が多いのですが、DADはよく研究されており、細胞内のCa2+の上昇がその原因となるというのが、現在、研究者間での一致した見解となっています。例えば、強心配糖体などは細胞内Ca2+を上昇させることによって、この形の不整脈を起こすもとの考えられています。
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