東邦大学へ メディアネットセンターへ バーチャルラボラトリへ
バーチャルラボラトリ 有機化学は面白い−アミノ酸の化学−
東邦大学名誉教授
横山 祐作
 | TOP | アミノ酸の化学 | もっと有機化学 | 最近の研究活動 | 研究室紹介 | プロフィ−ル |
次のページ
前のページ

アミノ酸の化学−無保護アミノ酸の官能基選択性

水の液性(酸性、アルカリ性)を変えるだけで、反応する場所を自由にコントロール!

4-トリプトファンの官能基選択性
ブロモアニリンの官能基選択性

 麦角アルカロイドの全合成を研究している過程で、4-Bromotryptophan(1)と1,1-Dimethylallyl Alcohol(2)のPd触媒による反応で、反応液の液性を変えることで官能基選択性が変化するという面白い現象を見出した。塩基性条件下では合成中間体の4-Vinyl体(3)が得られる(Heck反応)が、AcONaのような弱塩基を用いると、4位へのビニル化は全く進行せず、N-Allyl体(4) が得られた(右図上)。すなわち、4-Bromotryptophan (1)は、反応する官能基が4位のブロム基とアミノ基の2種類あり、反応するときの液性(酸性かアルカリ性か)を変化させるだけで、反応する場所をコントロールできるということを意味している。保護基を用いない合成反応の開発という観点から、液性を変えるだけで反応部位をコントロール出来るという結果には大変興味が持たれる。何故なら保護しないで反応を行う際には、官能基選択性がより重要になってくるからである。

 この様な選択性は、水にしか溶けないアミノ酸(1)のような特殊な性質を持つ化合物のみで発現しているかもしれないと考えた。そこで、有機溶媒にも良く溶けるブロモアニリンを使って、このN−アリル化及びHeck反応への選択性が発現するかどうかを詳細に検討しました(右図下)。その結果、メタブロモアニリン(5)でも、塩基性条件下では、ビニル体(6) が、中性条件下ではN-アリル体(7)のみが選択的に得られた。また、この選択性は水を溶媒として用いた(水の中の有機反応)ときだけ観察された。

参考文献:Y. Yokoyama, T. Takagi, K. Kaneko, T Natsume, H. Okuno, Adv. Synth. Cat. 2007, 349, 662-668.

左:実験ノート整理中
実験の前と後で、ノートの整理は大切です。
右:シリカゲルクロマトグラフィー
上から流し込むことで混合物を分離して、単一の化合物にします。