東邦大学へ メディアネットセンターへ バーチャルラボラトリへ
バーチャルラボラトリ 有機化学は面白い−アミノ酸の化学−
東邦大学名誉教授
横山 祐作
 | TOP | アミノ酸の化学 | もっと有機化学 | 最近の研究活動 | 研究室紹介 | プロフィ−ル |
次のページ
前のページ

アミノ酸の化学−Indolamine 2,3-Dioxygenase(IDO)阻害剤の開発

癌の治療薬やアルツハイマー予防薬ができる?

我々の開発したトリプトファンの合成ルート-生合成類似ルート-

 我々は、麦角アルカロイド全合成の過程で、トリプトファンをインドールとセリンを原料として、わずか三行程で光学的に純粋に合成する方法を見出した(右図)。生体でも、インドールとセリンからトリプトファンが酵素の力を借りて作られているが、試験管内で実用合成法として成功したのは、この研究が始めてである点を強調したい。
 この反応を利用して、新しいIndoleamine 2,3-Dioxygenase(IDO)の働きを抑制する化合物、すなわちIDO阻害剤を見出す研究を行っている。このIDO阻害剤は、アルツハイマー病の発症を防いだり、生体の防御機構によってガン細胞を殺しやすくしたりするための化合物である。

IDO阻害剤の合成

 我々の開発したトリプトファンの合成ルートを応用すれば、種々のベンズインドール類(4)かベンズトリプトファン類合成が容易である(右図)。そこで、我々の開発した方法で種々のベンズトリトファン誘導体(5)合成を行った。さらに、Benz[e]tryptophanについては、MTH-benz[e]tryptophan(6)の合成も行った。IDO阻害活性は、共同研究者の国立長寿医療センター研究所滝川博士、秋本博士に依頼して、測定していただいた。しかし、いずれの化合物もMTH-tryptophan(2)の阻害活性よりも弱かった。ところが、驚くべきことに、6の合成の過程で得られた、副生成物7の活性を測定すると、最も強い阻害活性を有することが分かった。この化合物は現在、化合物特許として出願中であり、医薬品になる可能性が高い化合物である。

クロマトグラフィーによる分離の実験
反応によっては、沢山の副生成物ができます。その中から目的の化合物を取り出すのは、とても時間がかかります。