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バーチャルラボラトリ 有機化学は面白い−アミノ酸の化学−
東邦大学名誉教授
横山 祐作
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アミノ酸の化学−麦角アルカロイドの全合成

麦角アルカロイド

小麦・ライ麦などに寄生する麦角菌(Claviceps purpureaなど)により産生されるアルカロイド

麦角アルカロイド

 代表的なアルカロイドとしてリセルギン酸(Lysergic Acid, 2)が知られている。Clavicipitic Acid(1)も麦角アルカロイドの一つである。リゼルギン酸の誘導体は、偏頭痛治療薬として用いられるエルゴタミン(Ergotamine, 3)、子宮収縮薬として使われるエルゴメトリン(Ergometrine, 5)や、幻覚剤として知られているLSD-25 (4) 等、現在でも治療に用いられている医薬品や、興味ある生理活性を有するものが多い。

麦角アルカロイドの生合成

麦角アルカロイドの生合成

 麦角アルカロイドは、インドール(6)とセリン(7)からトリプトファン(8)を生じた後、共通の中間体であるジメチルアリルトリプトファン(9, DMAT)から生合成される(右図)。骨格の全く異なるリゼルギン酸(Lsergic Acid, 10)もClavicipitic Acid(11)も同じDMAT (9) から生合成されるところに興味が持たれる。
 今回の我々のClavicipitic Acidの全合成が、いかに生合成経路と類似しているかに注目してもらいたい。
 一方、DMAT(9)からリゼルギン酸(10)の合成には、現在知られている有機反応では不可能なステップが存在し、このルートでの合成はいまだに達成されていない。