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バーチャルラボラトリ 心筋−心臓は電気とカルシウムでイオン動いている!−
東邦大学 薬学部薬物学教室  
田中 光 行方 衣由紀 M口正悟
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心臓の電気現象

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心筋細胞の活動電位

難易度2

活動電位

心筋細胞の細胞膜には電気的な活動が起こっており、これが心臓を規則正しくかつ協調性を持って収縮させる働きをしています。この電気現象は活動電位によって引き起こされているのです。
活動電位とは、脱分極による細胞の興奮、つまり細胞の電位が一時的にプラスからマイナスになる膜電位の一連の反応のことを言います。膜電位が脱分極し(0mVに近づき)閾膜電位(threshold)に達すると活動電位が生じます。

プラトー相 plateau phase

右の図は典型的な心筋活動電位を示しています。心筋細胞の活動電位は神経の活動電位と原則的には同一ですが、0電位付近での再分極の速度が極端に遅いのが特徴的です。活動電位波形の上でこの部分を プラトー相 plateau phase と呼びます。
心筋活動電位はプラトー相を有することが特徴であり、このために活動電位の持続時間が非常に長いのです。心筋活動電位の各相は、第0相から第4相までの番号で呼ばれることもあります。図に各相の名称を対比して示しました。


  • 第0相 Phase0:脱分極相(立上り相)(depolarization)
  • 第1相 Phase1:スパイク(spike)
  • 第2相 Phase2:プラトー相(plateau)
  • 第3相 Phase3:再分極相(repolarization)
  • 第4相 Phase4:静止電位(resting potential)
イヌプルキンエ線維の典型的な活動電位と各相の名称

プラトー相のイオン機構

  1. 静止電位、活動電位の急速な脱分極相( 立上り相 )、および速やかな再分極相のイオン機構は神経活動電位の場合とほぼ同一と考えてよいのですが、プラトー相形成のイオン機構は、種々の実験から現在ではほぼ右図のように考えられています。すなわち、Na+に対する細胞膜の透過性(記号 GNa)が急速かつ一過性に上昇することによって活動電位立上り相が形成されるのです。
  2. 続いて主としてCa2+に対する透過性(記号 GCa)がゆっくりと上昇するとともにK+に対する透過性(記号 GK)が減少することによってプラトー相が形成されます。
  3. 次いでCa2+透過性が減少しK+透過性が上昇するので再分極が起こります。

イオンに対する膜の透過性のもとは、細胞膜に存在するイオンチャネルです。

最初の急速かつ一過性のNa+透過性上昇をもたらす細胞膜のイオン通路を 速いNa+チャネル、これに対してプラトー相形成に関与するものを 遅いCa2+チャネル と呼びます。
この「遅いCa2+チャネル」はプラトー相形成に関与するとともに、心筋収縮にも極めて重要な役割を果たすと考えられています。このCa2+チャネルは膜電位に依存して活性化されるので、「 電位依存性Ca2+チャネル 」とも呼ばれています。また、これとは異なるタイプのCa2+チャネルも見出されているので、それらと区別するために、 L-型カルシウムチャネル と呼ぶこともあります。

活動電位の発生が細胞内外の陽イオンの濃度勾配を基にしていることは神経の場合と同様であり、Na+とK+濃度勾配の維持にはNa+ポンプが関与している点も神経と同じです。Ca2+の濃度勾配(細胞外が高く、細胞内はきわめて低い)維持にはCa2+ポンプやNa+-Ca2+交換機構が関与すると考えられています。

心筋活動電位の模式図
細胞膜のイオン透過性の変化
活動電位を決めているのは”イオンチャネル”

イオンチャネルは細胞膜に存在するタンパクです。細胞膜は脂質の二重膜でできていますが、これだけでは電荷を持ったイオンを通すことはありません。しかし細胞膜のイオンチャネルが開くとそこにイオンの通り道が出来、イオンが細胞内に流れこんだり、逆に細胞内から外へ流出します。
イオンチャネルは特定のイオンだけを通し、そのイオンの種類によりナトリウムチャネル、カルシウムチャネル、カリウムチャネルなどに分類されています。心臓の場所により活動電位波形が異なっているのは場所によってイオンチャネルの種類と数が異なっているからです。また、神経の興奮や血中のホルモンによりイオンチャネルの開きかたが変わると、活動電位波形や収縮力も変化します。イオンチャネルの機能異常は様々な疾患の原因になり、多くの治療薬がイオンチャネルに作用して奏功します。


 イオンチャネル研究の切り札”膜電位固定法”

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