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東邦大学 薬学部薬物学教室  
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循環系と血圧

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循環系の基礎知識 血管平滑筋 血管平滑筋と血圧の制御 生理活性物質および治療薬構造式 .

循環系の基礎知識

難易度2

循環系

 循環系 circulatorysystem (心血管系 cardiovascular system )は生体内の各臓器を血液で灌流して臓器の活動に必要な酸素と栄養を供給し、二酸化炭素などの不要物を運び去ることで私たちの体の正常な機能を支えています。循環系は血液を送り出すポンプである心臓 heart と血液の通り道である血管 blood vessel で構成されています。体全体を灌流して心臓に戻る体循環 systemic circulation と、心臓と肺を往復する肺循環 pulmonary circulation 2つの循環があります(厳密にはリンパ管 lymph duct も含まれます)。心臓から出た血液が通る血管が動脈 artery 、心臓へ戻る血管が静脈 vein です。


全身各臓器への血液循環の様子

血圧

血管系と血圧(体循環) 血圧 blood pressure とは太い動脈内の血液の圧力のことです。血圧は心臓の拍動と対応して変化しており、心臓の収縮により高くなった時の血圧を収縮期血圧 systolic blood pressure または最高血圧 maximum blood pressure 、心臓が弛緩して低くなったときの血圧を弛緩期血圧 diastolic blood pressure あるいは最低血圧 minimum blood pressure と呼びます。それらの平均が平均血圧 mean blood pressure 、差が脈圧 pulse pressure です。心臓の拍動に伴う血圧の変化を血圧の心拍変動と呼びます。一方、呼吸に伴う血圧の変化を血圧の呼吸変動と呼びます。息を吸ったときに血圧は低下し、息を吐いたときに上昇します。血圧が適切な範囲に維持されることにより血液が循環することが出来ます。血圧の値には個人差がありますが、弛緩期血圧80mmHg、収縮期血圧120mmHgが標準的な値とされています。収縮期血圧が100mmHgより低いと低血圧、弛緩期血圧が90mmHg、収縮期血圧が140mmHgを上回ると高血圧症と呼ばれます。

大動脈

大動脈の弾性の働きを示す模式図 大動脈 aorta は心臓(左心室)から拍出された血液が最初に通る血管です。大動脈は弾性に富んでおり血管壁の伸縮により心臓から送り出されてくる血液の圧変化を緩衝する働きをしています。心臓が収縮している期間(収縮期)には心室から大動脈に押し出されてくる高い圧力(収縮期血圧)により、血液は末梢に向かって流れるとともに、大動脈壁を押し広げます。心臓が弛緩する期間(弛緩期)には大動脈弁が閉じ、心臓からの血液の押し出しは途絶えますが、押し広げられた大動脈壁がもとに戻ろうとする力により血圧(弛緩期血圧)が保たれます。

細動脈

細動脈の構造 細動脈 arteriole は各臓器に血液を供給するやや細い動脈です。平滑筋層が発達しており、それが適度に収縮することで緊張を保ち、血管の断面積つまり血流に対する抵抗の大きさが調節されています。したがって細動脈平滑筋層の緊張度を変化させる物質は、臓器間での血流の分配を変化させると共に、血圧に影響を与えることになります。血圧を規定する主要な因子は単位時間に心臓から送り出される血液の量(心拍出量 cardiac output )と細動脈全体としての抵抗(末梢血管抵抗 peripheral vascular resistance )です。心拍出量と末梢血管抵抗の積が血圧になります。細動脈は交感神経により調節されていて、交感神経が興奮すると伝達物質のノルアドレナリンが血管平滑筋に作用して収縮を起こし、血管抵抗が増大します。ノルアドレナリンは心拍出量も増大させるため、この両方の効果により血圧が上昇します。この他多くの生体内物質や薬物が細動脈平滑筋に作用して血流、血圧に影響を与えます。
  細動脈の最も内側の血液に接している面は、一層の内皮細胞 endothelial cell で覆われています。内皮細胞は様々な生理活性物質を分泌して血管壁を保護しています。内皮細胞には収縮機能はありませんが、血管平滑筋に作用して収縮や弛緩を起こさせる様々な物質を分泌し、局所血流や血圧の制御に関与しています。

毛細血管

 毛細血管 capillary はほとんど内皮細胞のみからなる細い血管で、この部分の血管壁を通して血液中の酸素や栄養物が組織中の不要物と交換されます。酸素や二酸化炭素、水、イオン、尿素、グルコースなどは毛細血管壁を通って移動できます。毛細血管の直径はわずか5−7ミクロンですが、本数がきわめて多いため、総断面積は動脈の700倍にも達します。毛細血管にもわずかながら平滑筋があり、交感神経よりはむしろ局所で産生される生理活性物質により血管径が調節されています。

静脈

静脈弁の機能 静脈 vein は血液が心臓へと戻る通路で、循環血液の約75%が静脈系に存在しています。静脈は動脈と毛細血管により隔てられており、血圧は低くなっています。血液の逆流を防ぐために静脈弁が備わっており、骨格筋の動きにより加圧されて血液が心臓の方向に流れます。このしくみは特に下肢において重要です。

門脈

門脈 −消化管と肝臓を結ぶ門脈− 門脈 portal vein とは一般に毛細血管系同士をつなぐ血管のことですが、最も良く知られているのが消化管と肝臓を結ぶ肝門脈 hepatic portal vein です。消化管から吸収された物質は肝門脈血流に入り、必ず一度肝臓を通過した後全身の血流に入ることになります。有害な物質を吸収してしまった際に肝臓で代謝し解毒することが出来るという意味で合理的なしくみです。経口投与された薬物も肝臓を通るので、肝臓で分解されやすい薬物はたとえ消化管からの吸収が良くても全身血流中の濃度が上がりにくいということになります。これを薬物の肝臓における初回通過効果 first pass effect と呼びます。ただし、消化管の中でも直腸部分の血流は門脈を経ずに静脈に入りますので、直腸内投与された薬物は全身血流に入りやすいことが知られています。

冠動脈

 冠動脈(冠状動脈) coronary artery は心臓自身に酸素や栄養を供給している血管です。冠動脈は大動脈起始部より分枝しており、ここを通った血流は心臓全体を灌流したのち右心房に戻ります。冠動脈の血液の流れが悪くなったり途絶えたりすると、狭心症心筋梗塞といった虚血性心疾患になります。

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