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東邦大学名誉教授
小林 芳郎

基礎知識:体を維持するメカニズム

マクロファージ・好中球・単球 免疫とは何か 抗体とは何か

マクロファージ・好中球・単球

*1:角化細胞

角質細胞、ケラチノサイトともいう。上皮を構成し、ケラチンを産生する。上皮は角質細胞が多層化したもので、内側から基底細胞、棘細胞、顆粒細胞、最外層には死滅した角質細胞が存在する。

*2:メチニコフ

イリヤ・イリイチ・メチニコフ
(1845-1916)

ヒトデの幼生の中にさしたバラの棘の周りを取り囲むアメーバのような細胞を発見し、食細胞と名付けた。

その後哺乳動物にまで研究を広げて、体内に侵入した細菌や異物の排除にこの細胞が重要な役割を演じていることを明らかにした。1908年ポール・エーリッヒとともにノーベル賞を受賞した。

メチニコフ

細胞のターンオーバー

 私たちのからだはおよそ90兆個の細胞からできている。そしてそれらの細胞はたえずつくられ、たえず壊され、一定に保たれている。

 たとえば皮膚(ひふ)にできる垢(あか)は角化(かっか)細胞(*1)とよばれる細胞が死んでできるもので、そのかわりに皮膚では新しい細胞がいつもつくられている。爪(つめ)が伸びるというのは根元のところで爪 ができるからであるし、髪が伸びるというのは毛根で髪ができるからである。

 小腸粘膜の上皮細胞はたえず生まれ数日で死んでいく。体の中の細胞は神経細胞でさえ寿命があって、寿命がくると死に絶え、つねに新しい細胞と置き換わっている。これを細胞のターンオーバー、回転、という。

マクロファージ

 死んだ細胞は垢のように体外に出されてしまう場合と、マクロファージと呼ばれる食作用の盛んな細胞に取り込まれて消化される場合とがある。マクロは大きい、ファージは食べる細胞、ということなので、マクロファージは大きい食べる細胞(大食細胞)という意味である。

マクロファージの大きさ

好中球

 今ではほとんど使われなくなったが、ミクロファージと呼ばれる細胞もいる。小さい食細胞、つまり好中球のことである。

 好中球は、細菌を取り込んで殺菌する能力にすぐれた細胞だが、死んだ細胞を取り込むことはない。この2種類の細胞は、メチニコフ(*2) という有名な免疫学者が発見した。

単球

 マクロファージの親類の細胞に、単球と呼ばれる細胞がある。単球はおもに血流中に存在していて、移動性に富む。感染がおこると好中球が最初にその場に集まり、それに続いて単球が集まってくる。単球や好中球はリンパ球と同じく白血球の一員である。
単球は組織に移動したあと、マクロファージへと分化する。組織のマクロファージの一部は、組織に存在する前駆細胞からも分化する。マクロファージはおもに肺や肝臓などの組織に存在しており、単球と比べると移動性に乏しい。

マクロファージの活動