マクロファージは、それはそれは大切な細胞である。その理由のひとつは私たちの研究の対象だからだが、それよりも私たちのからだの健康と病気に深く関わっているからである。
マクロファージは食べる能力にとても秀でている。この細胞は私たちの体内のさまざまな場所に存在していて、細菌感染があれば最初にそれを食べ、感染があったことをからだに知らせるための物質をつくるし、古くなって死んだ細胞があればそれを生きた細胞から見分けて食べる。
細胞は増えるだけでなく必ず死を迎える。まったく成長がとまったように見えても、実は体内ではたえず新たに細胞が生まれ死んでいる。このような細胞の死はアポトーシスとよばれ、生理的条件で生じ、発生や免疫などに深く関わる。一方でネクローシスとよばれる細胞死があり、やけどや外傷などで生じ、炎症を伴うとされる。
近年アポトーシスの研究は特にその実行過程の研究を中心に爆発的な進展を遂げてきた。それに比べるとアポトーシス細胞の貪食除去とそれに伴う応答の研究はどちらかというとアポトーシス細胞の認識に関わる分子の同定に比重が置かれてきた。そのような中、私たちは死細胞を取り込んだマクロファージの応答とその制御機構について10年ほど前から取り組み始めた。そして大勢の大学院生の献身的な努力の結果、たくさんの独創的な研究成果を発表してきた。そこで今回は、一人でも多くの方にこの領域に興味を持っていただければと、バーチャルラボラトリの場をお借りして私たちの研究成果を紹介することにした。