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東邦大学名誉教授
小林 芳郎

生命の最小単位 細胞

生きている細胞 死んだ細胞

死んだ細胞

アポトーシス

 からだの中には、死んだ細胞も現れる。もっとも有名なもののひとつは、発生過程で見られる「プログラム細胞死」とよばれるもので、たとえば胎児の指(肢芽)の間にみられる。胸腺で、そこでは死んだ細胞をマクロファージが取り込んでいる像が観察されている。この細胞の死に方はアポトーシスとよばれる。細胞のターンオーバーのときにも細胞はアポトーシスで死ぬ。

  アポトーシスにおちいると、細胞膜は無傷のまま、細胞の大きさが小さくなる。さらに重要なことは、本来細胞膜の裏側に存在するフォスファチジルセリンというリン脂質が、アポトーシスのときには細胞膜の表側に移動する。この他にも生きた細胞には見られないアポトーシス細胞の特徴があるようで、これらをマクロファージが見分けているらしい。

ネクローシス

  一方、やけどをしたり強い放射線を浴びたりすると細胞は、細胞膜に穴があいて、死ぬ。この細胞の死に方はネクローシスとよばれる。からだの中でネクローシスが起こると炎症が起こる。これは細胞内のタンパク分解酵素やその他のタンパク質がネクローシスに伴って放出されるためである。

死んだ細胞の行方

  死んだ細胞はマクロファージに取り込まれ、食胞(ファゴソーム)がつくられる。食胞はリソソームと融合し、リソソーム酵素が供給され、死細胞が消化される。