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東邦大学 薬学部薬物学教室  
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循環系と血圧

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循環系の基礎知識 血管平滑筋 血管平滑筋と血圧の制御 生理活性物質および治療薬構造式 .

血管平滑筋

難易度3

血管平滑筋の収縮と弛緩

クリックすると大きな画像が開きます 血管平滑筋は収縮、弛緩によって血管径の調節を行っています。血管平滑筋は血管の断面の円周方向に配列しており、平滑筋が収縮すると血管径が細くなり、抵抗が高まります。心筋と異なり平滑筋細胞同士の電気的連絡は悪く、交感神経終末から放出されるノルアドレナリン noradrenaline をはじめとする各種液性因子に反応してゆっくりと収縮弛緩します。最近ではイメージング技術の進歩により、生きた平滑筋組織の様子を画像として捉え、個々の細胞の律動的な動きの集積として血管収縮を理解するような研究も可能になってきました。血管平滑筋の収縮弛緩のしくみは血管の種類によって差違がありますが、概略は以下のようになります。

右の図をクリックすると「血管平滑筋の収縮・弛緩の機序と調節および主な薬物」を示した図が別ウィンドウで表示されます。

血管平滑筋細胞へのCa2+流入

 血管平滑筋細胞の静止膜電位は心筋や神経よりも浅く、−50-−70mV程度です。ノルアドレナリン等の収縮物質が平滑筋細胞膜上の受容体に結合するCa2+チャネルが開口して細胞内へCa2+が流入し、収縮の引き金になります。血管平滑筋のCa2+チャネルには受容体にリガンドが結合して開く受容体作動性チャネルと、心筋のものと類似した膜電位依存性チャネルの両者が存在すると考えられています。収縮の際に膜電位が静止状態よりも浅くなったり(部分的脱分極)、活動電位が発生したりすると、これが膜電位依存性Ca2+チャネルの開口を促進させます。

血管平滑筋細胞内でのCa2+放出

 血管平滑筋の収縮には細胞内貯蔵部位からのCa2+の放出も関与します。収縮物質が受容体に結合すると細胞膜上のホスホリパーゼC phospholipase C が活性化され、ジアシルグリセロール diacyl glycerol (DG)イノシトール三リン酸 inositol triphosphate(IP3)が生成します。これはイノシトールリン脂質の代謝回転 PI turnover と呼ばれる過程の一部です。ジアシルグリセロールはプロテインキナーゼC protein kinase C を活性化し、血管収縮を含めた様々な反応を引き起こします。イノシトール三リン酸は細胞内貯蔵部位である小胞体からCa2+を放出させます。この放出を担うのがIP3受容体チャネルで、心筋や骨格筋の筋小胞体からのCa2+放出に関与するリアノジン受容体チャネルと類似したタンパクです。

血管平滑筋のCa2+濃度と収縮・弛緩

 Ca2+流入やCa2+放出により平滑筋細胞質内のCa2+濃度が上昇すると、Ca2+はCa2+結合蛋白質カルモジュリン calmodulin と結合します。Ca2+と結合したカルモジュリンはミオシン軽鎖キナーゼ myosin light chain kinase を活性化し、この酵素が収縮タンパクを構成するミオシンの軽鎖 myosin light chain をリン酸化します。リン酸化されたミオシンはアクチンと反応し、ATPのエネルギーを利用して収縮します。これが血管平滑筋の収縮です。リン酸化されたミオシンがホスファターゼ phosphatase で脱リン酸化されると収縮反応は停止し、平滑筋の弛緩が起こります。増加した細胞内Ca2+は細胞外液のNa+と交換してCa2+イオンを輸送するNa+-Ca2+交換機構やATPのエネルギーでCa2+を輸送するCa2+ポンプによって細胞外に排出されるか、あるいは再び細胞内貯蔵部位に取り込まれることによって細胞質から除去されます。

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