東邦大学へ メディアネットセンターへ バーチャルラボラトリへ
東邦大学名誉教授
佐藤 研二
ナトリウムの燃焼気体燃焼とジェット燃料

物質の燃焼

燃焼と光<炎色反応>

光の色の違い

 私たちの目には、ろうそくの炎は赤く(又は黄色く)、ガスバーナーの炎は青く見えます。この違いは何故起こるのでしょうか。光は電磁波の一種であり、光を発生させるためにはエネルギーが必要であることがわかっています。

 火炎の青い部分は燃料ガスと酸素が反応している反応帯です。赤い部分は、酸素と反応する前の熱せられた燃料ガスから遊離した炭素の集合です。

 一般に炭素を多く含む物質ほど赤い光を発します。実はこの赤い部分は、遊離した炭素が輝いているために赤く見えます。本当はその外側に青い炎の部分があるのですが、赤い光が明るいために私たちの目にはほとんど見えません。この赤い部分は熱いうちに酸素の供給が十分あれば酸素と反応しますが、そうでない場合には燃え残ってすすとなります。

 ガスバーナーの青い炎では、炭素とつりあいのとれた量の酸素が予め混合されているために、燃料ガスは速やかに酸素と反応します。そのため、赤く輝く遊離した炭素ができず、青い炎に見えます。ガスバーナーの空気の混合量が理想的な値より少なくなれば、ガスバーナーの炎も青い色を保てない部分が出てきます。この部分は、炎の外側にある空気から酸素を取り入れる拡散燃焼を行っています。

 ところで、この上述の二つとは別に、燃焼時に黄色や緑、紅色などさまざまな色を発する物質があります。この色の違いはどのようなことから生れてくるのでしょうか。

 では、特徴のある炎色を示す物質を見てみましょう。

 下図は左から水道水炭酸水素ナトリウム硝酸カリウムりん酸アンモニウム塩化カルシウム塩化バリウム塩化リチウム塩化ストロンチウムです。

炎色反応

 炎色反応の色は金属原子が励起されて発する光のうち、ある特定波長の光が最も強いために生じるものです。化学反応中、原子のもつ電子のエネルギーが高いエネルギー準位から低いエネルギー準位に移るときにその差が光となって放出されます。放出されるエネルギーが大きければ短波長の光を、小さければ長波長の光を発することになります。

 逆に炎の色-スペクトル-の違いによって、どのような物質が燃焼したかを知る手がかりにもなります。例えば、夏の夜空に打ち上げられた花火がどのような物質の炎色を利用しているのかを推測することができます。また、爆発事故の写真のスペクトル分析を行うことでどのような物質が爆発したのかを知る手がかりになります。もっと大きなものに目を向けると、遥か彼方の恒星の光からどのような物質が燃料であるのかを推測することができます。

水道水

水道水の主成分はH2Oですが、その他にも殺菌・消毒のために次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)をはじめとするいろいろな物質が加えられたり含まれています。また、水道設備の状況によっては鉛や酸化鉄など物質が混ざっていることがあるかもしれません。

写真は東邦大学の水道水の炎色反応です。橙色の光が見えます。次に出てくる炭酸水素ナトリウムの炎の色とよく似ています。

※純水を使うとこのような色はつきません。物質の炎色反応を確認するためには純水で実験する必要があります。

水道水

炭酸水素ナトリウム

元素記号:NaHCO3

加熱すると270度で二酸化炭素と水を放出し、Na2CO3となります。また、水溶液は弱アルカリ性を示します。

非常に激しく燃えました。明るい橙色の光です。炭酸水素ナトリウムには炭素が含まれるため、今回実験した他の物質の中でもひときわ明るい光を発しました。

炭酸水素ナトリウム

硝酸カリウム

元素記号:KNO3

加熱すると400度で亜硝酸カリウムとなり酸素を放出し、1000度-1200度で急激に酸化カリウム、窒素、酸素に分解します。

下の写真では、青みがかったピンク色の光が見えます。ピンクはカリウムの炎色反応により発現しています。

硝酸カリウム

リン酸アンモニウム

元素記号:(NH43PO4

水溶液を加熱するとNH4を失って、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO3)となります。リン酸二水素アンモニウムは肥料、染料の分散剤、防火、防炎剤、培養剤として使われています。

青紫色の光が見えます。リンの炎色反応です。

リン酸アンモニウム

元素記号:Cu

銅は電気や熱の伝導率が高く、電線や電気材料に純銅が多く使われています。また、銅は生体必須元素でもあり、不足すると貧血を起こします。

融点:1084.5度 沸点:2595度

下の写真では緑色の光が見えます。炎色反応が捉えにくく、動画でも外炎に一瞬緑色が見える程度です。

銅

塩化カルシウム

元素記号:CaCl2

融点:772度 沸点:1600度

熟した柿のような濃い橙の炎色反応が捉えられます。動画でよりはっきりと見ることができます。

塩化カルシウム

塩化バリウム

元素記号:BaCl2

有毒なので取り扱いに十分な注意が必要です。

融点:963度 沸点:1560度

明るい黄緑の光はバリウムの炎色反応です。下の写真より動画の方がはっきりとした特徴を見ることができます。

塩化バリウム

塩化リチウム

元素記号:LiCl

塩化リチウムの高濃度の水溶液は蒸気圧が小さいので吸収式冷凍剤や空調装置の除湿剤として用いられています。

融点:614度 沸点:1357度

濃いピンク色の炎色反応はリチウムの反応です。写真では次の塩化ストロンチウムとの違いがわかりにくいのですが、動画ではよりはっきりとした違いを捉えられます。

塩化リチウム

塩化ストロンチウム

元素記号:SrCl2

融点:875度 沸点:1250度

くっきりとした赤い光はストロンチウムの炎色反応です。動画で見ると塩化リチウムとの違いがわかると思います。

塩化ストロンチウム

※このサイトに掲載されている文章、写真および動画については許諾の無い複製、商用目的の利用を禁じます。

前の頁へHOMEへ次の頁へ