爆発とは何でしょうか。
広辞苑第五版によれば
(1)圧力の急激な発生または開放の結果、熱、光、音などと共に破壊作用を伴う現象。急激な化学反応、核反応、容器の破壊などによって生ずる。
(2)比ゆ的に、抑えていた感情が一気に吹き出すこと。
とあります。(2)はさて置くとして、まず鍵となるのは「圧力」でしょうか。
例えば戸外で家庭ガスコンロ用のメタンガスが漏れ、これが半径数メートルにわたり空気と混合しているものに火をつけたとしても、火炎は伝播(燃焼)していきますが圧力上昇は小さく、爆発は起こらないと考えられます(但し、水素と空気の混合気など燃焼速度の大きな混合気のときには、状況によりいくぶん圧力の上昇があると言われています)。
しかし、これが閉鎖された狭い室内空間で起こると
- 火炎が伝播
- 燃焼によって引き起こされる温度上昇によって室内の気体の体積は一気に膨張しようとする
- 閉鎖空間の圧力は急激に高まる
- 圧力に耐え切れなくなった弱い部分、例えば扉や窓ガラスが割れ、そこから一気に高圧の気体が噴出する
といった状況がほんのわずかな時間で起こり、大変な被害をもたらします。
燃焼>高圧>爆発(ガスの噴出) という図式はジェットエンジンの仕組みとよく似ています。
このメタンガスの燃焼爆発は、気相(燃焼の直前の形態が気体)における燃焼現象によるもので、気相爆発といいます。
気相爆発には、ガス爆発の他に噴霧爆発(灯油などの可燃性液体の噴霧されたものによる燃焼爆発)、粉塵爆発(炭の粉、小麦粉、鉄粉などの浮遊粉塵の燃焼爆発)があります。
いずれも、燃焼の起こるときの周囲の条件や粉じんの性質などにより、火炎が伝播するだけで燃焼が終わるか、圧力上昇を伴う爆発を起こすかが異なります。
気体だけでなく、液体も固体もそれぞれ液相爆発、固相爆発を起こします。
火薬や爆薬の爆発がこれに入り、これらの爆発では体積の膨張が気相爆発に比べて激しく、衝撃波や圧力波が容易に発生し、爆発の威力も増します。
ところで、蓋の閉まった缶やビンを加熱すると中の物質が熱によって膨張しようとし、その加圧によって容器破裂し圧力波を生じることがありますが、これは気相爆発とは呼びません。
気相爆発、液相爆発、固相爆発ともに、燃料となる物質が燃焼することが前提となります。
これらのことから、燃焼と爆発の違いは、急激な「伝播する速度の変化」と「圧力の変化」、「温度の変化」にあると考えることができるのではないでしょうか。
ところで、爆発の際に生ずる爆音の正体は何でしょうか。
私たちが耳で聞く音は空気の振動です。この振動が私たちの鼓膜を震わせ、脳が音として認知します。爆発の音も鈴の音も、空気の振動であることに変わりはありません。空気のない真空管の中や、宇宙空間では音は伝わりません。
圧力の振幅の小さい場合を“音”ということができます。圧力波は振幅が大きくなるほど音速よりも速いより大きな速度で空気中を伝わります。
ダイナマイトなどの爆薬が爆発するときのような、音と衝撃波を伴う激しい爆発を爆ごうと呼んでいます。
もともと「爆ごう[detonation]」は“大きな爆発音を発する”や“激しい爆発”という意味を持っています。また、爆発により生じた衝撃波を爆ごう波と呼びます。爆発の燃焼が音速を超えて伝わるものを爆ごうと呼んでいます。
爆ごうは、細長い管のような空間では起こりやすく、球や立方体などの形状の空間では起こりにくいという特性があります。開放された空間ではさらに起こりにくくなります。また、着火源が電熱線であるよりも、衝撃波で着火する方が起こりやすくなります。工業的に利用される爆薬の雷管はこの特性を利用した着火源です。
爆ごうは、高速で起こる燃焼からエネルギーを供給されつつ、超高速で伝播する衝撃波です。爆ごうの起こる経緯には次の二つが上げられます。
爆ごう転移
通常の火炎が次第に加速し、高速の燃焼から爆ごうへと状態が転移する場合を爆ごう転移と呼んでいます。可燃ガスの種類によって爆ごうへの転移の起こりやすさは異なります。
直接起爆
発火源が直接爆ごうを生ずる場合に、これを直接起爆と呼んでいます。爆薬などはこの直接起爆を起こします。この起爆に必要なエネルギーが小さければ小さいほど、爆ごうを起こしやすい状態ということになります。このとき、発火源からの衝撃波が爆ごうを引き起こす引き金となるために、衝撃波起爆とも呼ばれています。