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バーチャルラボラトリ 心筋−心臓は電気とカルシウムでイオン動いている!−
東邦大学 薬学部薬物学教室  
田中 光 行方 衣由紀 M口正悟
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心筋の普遍性と多様性

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心臓の部位による違い

難易度2

心房筋と心室筋の違い

 細胞の大きさとT管の有無

 神経等による調節

【神経伝達物質の作用】
 自律神経は心室筋よりも心房筋の方に高密度に分布しています。神経伝達物質などに対する心筋の反応も心房と心室で差があります。交感神経の伝達物質ノルアドレナリンにより収縮力が増大する点は共通していますが、副交感神経伝達物質アセチルコリンは単独で心房筋の収縮力を減少させるのに対して、心室筋の収縮力にはほとんど影響しません。これはアセチルコリンに反応して開くカリウムチャネルが心房筋にのみ存在しているためです。ただし、心室筋の収縮力がノルアドレナリンによって高まった状態では、アセチルコリンによる減少が見られます。ノルアドレナリンは心筋細胞内のサイクリックAMPという物質の産生を活性化して収縮力を増大させるのですが、アセチルコリンはサイクリックAMPを合成する酵素の機能を阻害することでノルアドレナリンの作用を抑制します。

【内皮細胞】
 哺乳動物の血管の内側には”内皮細胞”と呼ばれる筋肉でない細胞の層が存在します。内皮細胞から血管平滑筋へ様々な物質が放出されて平滑筋の緊張度を変化させ、血管の直径を制御し、血流の調節に関わっていることが知られています。実は心臓の内腔にも内皮細胞の層が存在しています。心室筋では筋肉の層が厚いため、内皮細胞の影響は無視できる程度かも知れませんが、心房筋ではその影響が顕著に見られる場合があります。

・・・・・・例えば・・・・・・
マウスの心房筋にアセチルコリンを作用させると、収縮力が減少する通常の反応に加えて、ゆっくりと収縮力が増大してくる現象が見られます。これはアセチルコリンが心房の内皮細胞に作用してプロスタグランジンという物質を放出させ、これが心房筋細胞に作用して収縮力が増大するためです。

心房筋と心室筋の違い : 神経等による調節
  心房筋 心室筋
自律神経密度 高密度 心房筋より低い
ノルアドレナリンに対する
反応
収縮力が増大する
アセチルコリンに対する
反応
単独で心房筋の収縮力を減少させる ほとんど影響を受けない
内皮細胞の影響 顕著に見られる場合がある ほとんど影響を受けない
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