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東邦大学 薬学部
生化学教室 高橋 良哉
老化:いつから?止められる?戻れる? 

鉄と老化

カルボニル化タンパク質と鉄

加齢に伴うタンパク質傷害は、多くの生理機能低下や様々な疾患の発症メカニズムを考える上で重要です。何故なら傷害を受けたDNAや脂質、それにタンパク質自身を修復あるいは分解除去し新たに合成するのはタンパク質(酵素)だからです。
酸化によるタンパク質傷害には、メチオニン残基のメチオンニンスルフォキシドへの変化、チロシン残基間での架橋反応、リシン、アルギニン残基などのアミノ酸側鎖のカルボニル化などが知られています。なかでもカルボニル化はタンパク質の酸化マーカーとしてよく用いられ、いろいろな動物種の組織タンパク質で加齢に伴い増加することが知られています。

タンパク質のカルボニル化反応には、鉄が関与していると考えられています[図3]。すなわち、加齢に伴う鉄蓄積がタンパク質のカルボニル化をさらに促進している可能性があるのです。

図3

 

カルボニル化タンパク質は、タンパク質の直接的な酸化反応のほかにも脂質過酸化やグリケーション反応(非酵素的糖化反応)の生成物との反応でも生じる可能性があります。例えば、脂質過酸化物の分解反応により生じる反応性の高いアクロレイン、マロンジアルデヒド、4-ヒドロキシノネナールなどのアルデヒド類は、タンパク質のアミノ基やチオール基と反応し、カルボニル基をもつタンパク質となる可能性があります[図4]。

脂質過酸化やグリケーション反応は鉄の存在で亢進します。加齢に伴い蓄積した鉄は脂質過酸化やグリケーションの反応性を高め、それらの反応生成物が結合したカルボニル化タンパク質産生を高めていると考えられます。

図4