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東邦大学 薬学部
生化学教室 高橋 良哉
老化:いつから?止められる?戻れる? 

加齢速度と環境因子(温度・食餌・冬眠)−誕生から死までの生物時間の流れ−

はじめに

 いろいろな動物の寿命は遺伝的要因によって決まっていることは間違いありません。 しかし、寿命は環境要因によって大きく変化することも事実です。例えば、ショウジョウバエの飼育温度を上げると寿命は短くなります。 高温飼育による寿命短縮は、代謝活性促進による酸素消費量増加に伴って起こるDNA、タンパク質や脂質などの生体高分子の傷害によると考えられています。 しかし、環境温度や食餌制限の寿命に対する効果には酸化などによる傷害分子蓄積では説明しにくい現象がみられます。 例えば、若齢期に高温飼育や食餌制限を短期間実施した場合でも寿命は変化します。 仮に、若齢期の高温飼育がDNA、タンパク質、脂質などに傷害を与えていたとしても、生体はこれらの傷害分子を修復あるいは分解除去し新しい分子を合成する機構を備えているので若齢期で受けた傷害をその後も生涯にわたり引きずり寿命が変化しているとは考えにくいです。

ここでは、飼育温度、食餌制限および冬眠が寿命に与える影響を紹介しながら動物の誕生から死に至るまでの生物時間の流れについて考えて行きます。