RAKE

 RAKE とは「熊手」のことです。 受信方法が、落ち葉を熊手で掻き集めることに似ていることから来ています。 携帯のCDMA受信で広く用いられています。 携帯のCDMA符号の長さは 256 chips あるいは 512 chips ぐらいです。 これらに、ユーザーのデータ () が掛けられて総和された信号が基地局から送信されていると考えてください。

この信号がマルチパスを受けて、次のように受信されるとします。 説明の簡単のため、雑音を無視し、3波モデルで話を進めます。 下はマルチパス歪の概念図です。

img1.gif

受信信号の端っこを除いた大部分は

のようになっています。 これを

で表します。 この受信信号と自分のCDMA符号を1チップづつずらせたものとの相関をとると、以下のようにマルチパスが推定できます。 相関を <  ,  > で表すと、




のように書けます。 相関(4)、(5)、(6)は、式(2)と式(1)を順次代入し、CDMA符号の直交性から次のようになります。



上から、第1項、第2項、第3項に大きな相関成分が をともなって現れています。 他の項は、相対遅延のため、正確に直交しないことによる干渉成分です。 このようにして推定した、 は極性の自由度を含んでいるので、実際に、

であったとしても

との区別はつきません。 この自由度は受信側で知ることはできませんが(差動・グレー参照)、受信中はどちらかに固定しておきます。 こうして、最後に「熊手」操作を次のように実行します。 ちなみに、相関(7)、(8)、(9)のことをフィンガー(指)と呼んでいます。

この結果、

となり、大きな振幅で の推定ができるというわけです。
Rake 受信は、受信信号を整合フィルターに通してから、符号相関をとることと同じです。 上式の は<マルチパス+整合フィルター>の応答のピーク値に相当しています。 ピーク以外の符号間干渉は、 に陰に含まれており、実際には無視できません。しかし、この部分は期待値ゼロで確率分布するので、コード長をどんどん長くすれば第一項がどんどん強調されることになります。
もし、マルチパスの振幅特性がフラットならば、整合フィルターは等化と同等になり、符号間干渉が消滅して、上式の   はゼロになります。 この場合は、RAKE の前段に白色化フィルターを置くのが理想的です。 <白色化フィルタ+RAKE>は等化と同じです。


注1:RAKEが最適判定であるかどうかに関しては最大事後確率判定を参照してください。

注2: 携帯のダウンリンクでは、各ユーザは受信信号と自分のコードの相関を取るだけで済みます。なお、多重化をしない場合を DS-SS: Direct Sequence Spread Spectrum と呼んで区別すべきです。一対一通信の場合はコードとしてM系列が有効ですが、一対n 非多重化通信では自己相関がデルタ関数に近く、かつ時間シフトに関しても相互相関が小さい直交拡散符号をユーザ数だけ設計することになります。