ロシア・極東プリモーリエ地区に点在する鉱泉を訪ねて

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図1 > 図2 > 図3 

クロコダイルは力持ち!


写真26 元気いっぱい川を横断

翌日,シホテアリン山地を横断する道路の中間部に位置する例の決壊した橋がある川の水位が落ち着き,ロシア製の四輪駆動車(あだ名はクロコダイル写真26)は川の浅瀬を元気に横断することに成功しました。遅れを取り戻すために快適にルシアンハイウェイ(未舗装だがかなりスピードが出せる・・・)を走り出したクロコダイルは次の目的地に向かいました。

 水遊びができる川の近くにテントを張り、若人2人に食事の準備をしてもらっている間にサンプリングに出かけました(写真27写真28)。


写真27

写真28

 テントを張った場所から少し行くとレニノ(Lenino)という小さな村がありました。次のサンプル採取地点(図1の6,7)はここから奥に入っていった場所にあります。白樺林を右手に見ながら(写真29),村から3km 地点の分岐を右に行き,そこからさらに森の中の1本道を約13km 入った山の中に目指す鉱泉はありました。分岐が多く道に迷いましたが(写真30),途中サイドカー付きのオートバイに乗った2人連れのハンターに案内してもらったのが,レニノ(Lenino-3,別名ナルザニー(Narzany))という全く手つかずの自然を保っている湧水でした。近くの小さな川に流れ込んでいましたが(写真31),湧出点からその川への合流点まで,茶褐色の沈殿物が大量に確認されました(写真32)。この地点はPrimorye - Central Sikhote - Aline 断層群の中心的な断層の近くに位置しています。この地区は地質構造上いくつかのブロックに分けられますが,三畳紀からジュラ紀の岩石と初期白亜紀の火山岩から成り立っているそうです。


写真29

写真30道?どちらへ行ったらよいのか?

写真31赤褐色の沈殿物が観察される
(レニノ-3 鉱泉)


写真32レニノ-2 鉱泉

 そこから2 km 村の方向に戻ったところに分岐点がありますが,その分岐点を奥の方に入って行くと木が倒れて車道を塞いでいました(写真33)。車が通れるように木を切り倒し,さらに進むとそこに鉱泉がありました。見た目は先程のソドヴッイと似て三方を高い板で囲んであり,湧出する水は確認できましたが,ほとんど気泡は出ていませんでした。ここはレニノ-2 (Lenino - 2) と呼ばれている鉱泉です(写真34)。


写真33

写真34

 

 サンプリングを終了し設営地に戻ったのは4〜5時間たっていた様に記憶しています。息子どもは早めに食事の支度を終え,2人で水遊びに興じていました(写真35写真36)。


写真35

写真36釣れるのか?

 シホテアリン山地を横断する未舗装の道路上の湿潤な場所や,鉱泉水の流れ出ている浅い水たまりのところに数十から数百匹の蝶が群れている光景をあちこちで見ることが出来ました。これは彼らがミネラル分を豊富に含んでいる場所を見つけ,動物体内で必要な元素を吸収するために水といっしょにミネラルを摂取しているらしいということでした(写真37写真38)。


写真37

写真38

 


クロコダイルの労をねぎらう

写真39手動ポンプでくみ上げる ルツキー鉱泉

 さらに車を東の方向に走らせ,街道沿いの大きなニジーネ・ルツキー(Nizine Luzky) 村から少々入った ルツキー (Luzky) という場所にある鉱泉には,ポンプで汲み上げている井戸と自然に湧出している2種類の井戸がありました。ポンプ式で汲み上げるよう管理されている井戸はいくらかのお金を払い水を買うシステムになっており(写真39),もちろんこの井戸からも試料を採取しました(図1の9)。もう一方の自然に湧出している井戸でも許可を得て試料を採らせてもらいましたが(写真40写真41),円筒形の木枠(直径30cm)の井戸の内側には赤褐色の沈殿物が付着していたものの,今まで見てきた湧水群と異なり沈殿物の量はさほど多くはなく採取に手間取りました。気泡はかなり多く出ていました。この鉱泉はチュグエフカ (Chuguevka) 群に属し,初期白亜紀の岩石や古第三紀の溶岩層を通過した水が火山性窪地にたまったものだそうです。


写真40 ルツキー鉱泉 もうひとつの源泉

写真41

 

 ここからゴルノヴォドノエ (Gornovodnoe) という場所にある鉱泉までその日のうちに行き、その近くにあるロシア科学アカデミー所有の施設に宿泊する予定でした。久しぶりに屋根があるところに泊れると聞いて楽しみにしておりましたが、その施設までは相当な距離がありその日のうちに到着できるのかも微妙でした。相当に遅く到着することになると予想はしていましたが走れど走れど目的地は遠く、もちろん街灯などない真っ暗な道を車のヘッドライトだけが真直ぐに照らし、その光の道をクロコダイルはひたすら走り続けていました。その日が終わろうとしたその時、道の脇にゴルノヴォドノエ鉱泉がありました。チュダエフ氏はかつて訪れた事がある彼の記憶の中から直感でわかったそうで、一旦通り過ぎたところを戻って確認しました。真っ暗なので鉱泉は確認のみにし、この近くに存在するであろう本日の宿泊地を彼の記憶を辿ってさがすことになりました。


〜ゴルノヴォドノエに行く途中の風景〜

 

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