掲載 2011年秋

薬物応答性の不思議

博士1年 M口正悟

 私は心臓の発達変化、特に薬物応答性の変化について研究しています。交感神経系のアドレナリン受容体にはα受容体とβ受容体があり、身体の様々な部位に分布しています。特に心臓ではβ受容体がよく知られていますが、実はα受容体も存在しています。マウスの心臓では、このα受容体を介した反応が発達に伴い変化するのです。薬物を用いてα受容体刺激を行うと、新生仔マウスの心臓では収縮力が増大する反応が、成体マウスの心臓では逆に収縮力が減少する反応が観察できます。同じ受容体を刺激しているのになぜ反応が収縮増大から減少に変わってしまうのでしょうか?私はこの現象に興味を持ち、発達段階sごとの受容体刺激から収縮力変化に至る薬物応答メカニズムの解明を目的とし、日々研究をしています。

 心筋細胞が収縮するときには、活動電位の発生、イオンチャネルの開閉、細胞内カルシウム濃度変化、収縮タンパクの運動など様々なことが起こります。この収縮までの一連の過程を興奮収縮連関といいます。マウスの心臓は出生後に心拍数が上昇していき、成体では毎分600回にも達しますが、これにあわせるかのように心筋の興奮収縮連関も変化していきます。私はこの変化が薬物応答性に影響を与えているのではないかと考え、興奮収縮連関の各々の過程について収縮力測定、活動電位測定、パッチクランプ法、イメージング法などを用いて詳細に検討しています。それぞれの実験技術の習得や、得られた結果から総合的に考察し、真実を明らかにすることは簡単ではありませんが、やりがいがあり、飽きる事はありません。

 私が薬物学教室を選んだ理由の1つとして、研究室訪問の際に見せてもらったカルシウムイメージング法に惹かれたことが挙げられます。カルシウムイメージング法は、普段は見る事の出来ない細胞内のカルシウムの動きを蛍光の強さによって観察することができます。ピカピカ光っていてただ眺めているだけでも楽しいですよ。

 薬物学教室はいろんな実験法を経験できますし、やりたいことは何でもやらせてくれる研究室だと思います。何か一つでもやりたいこと、興味があることがあれば薬物学教室を覗いてみてはいかがでしょうか?

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