東邦大学名誉教授
山内 長承
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4.考察と今後の取り組み

システムを稼動して分かったこと


2003年度秋学期からアーカイブシステムを実稼動し始めましたが、その中でいくつかの予期していないことが判明しました。

1)黒板の文字が読めない問題

大教室の場合は黒板の幅が広いため、黒板全体を撮影すると字が小さくなって判読できない ということが事前に予想されていました。つまり、読めないのは当初から「仕様」であったのですが、 学生・教員の両方から「読めるようにして欲しい」という要望が強く出される結果になりました。
技術的には、カメラを固定し且つ黒板全体を写したい以上、字が小さくなることは避けられません。 これに対していくつかの対案を考えることができます。


アプローチ1カメラを追尾させる

カメラに操作員が配置できる環境であれば、適宜カメラを振ったりズームしたりすることにより解決できます。しかし、今回のシステムは一切人手をかけないという前提で始めたので、人間による操作は期待することができません。ズームを固定したまま一定周期でカメラを移動する(左右に首を振る)のも1つの案ですが、受講者の気分をかなり害するものでしょう。むしろ、ズームを固定にしたままでも、カメラが教員を自動追尾するような仕組にすれば、現実的な解決案となり得るでしょう。 教員の位置検出にはすでにさまざまな試みがされていて、それらを見ると実用上は追尾可能だと思われますが、追尾のための設備が一般にかなり複雑かつ高価になり、全教室に設置するとかなり大きなコストになります。今回はそこまで踏み込むことをせず、固定カメラでの撮影に限定して、その中で最善を尽くしてみることにしました。自動追尾は将来的な検討課題として置いておきます。



アプローチ2画面の解像度を上げる。

 当初のシステムは、ビデオアーカイブファイルの大きさを小さくするために、動画のビットレートは300Kbps程度を想定しました。それに合わせるために、画面の解像度を320x240としていました。この程度ですと、全体の風景として認識する場合、たとえば教員 の姿が映っているとか、教員の顔がアップになっている風景では十分な解像度ですが、黒板の文字を解読するには画面が粗すぎる結果となりました。 更に、動画圧縮の圧縮率を高くしていたために、物体の輪郭がにじんでしまい、文字がにじんで読めない結果となりました。 これに対して、画面の解像度を640x480に上げ、更に圧縮率を低めに設定することによって、文字のにじみを軽減して判読しやすくする工夫ができます。ユーザの要望を得て、2003年11月の時点でエンコーダのパラメタを再設定することにより、640x480で約1Mbps程度のストリームとしました。 その結果、大教室であっても、黒板に大きく書かれた文字は判読できる程度になりました。小さく書かれた字はまだ判読しづらい状態です。



アプローチ3カメラの品質とアナログ回路の品質

 ビデオは各教室のカメラで撮影され、アナログ信号で1階のサーバー室まで転送されて、エンコーダの入力となっています。カメラの品質やアナログ信号の転送の品質により、サーバー室でエンコードする直前の信号をモニターに写して見ると、必ずしも十分鮮明というわけではありませんでした。教室によっては若干のゴーストが出たり、図形の輪郭がにじんでいたりします。 これらは、デジタル機構の工夫では解決できない問題です。これに対して、カメラの品質の改善、アナログ回路の改善、アナログ転送距離の短縮(カメラサイドでデジタル化してから転送するなど)の工夫が考えられます。カメラは今回は監視用を主な用途とする物を利用しましたが、画面の精細度という点からはむしろ汎用のビデオカメラのほうがよいのかも知れませんし 、高解像度のカメラを導入する選択も可能でしょう。これらの3つの改善は設備に関わるものなので、簡単に変更できませんが、将来的には工夫して改善したいと思っています。



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