キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達(冬のすがた)

再び中央道路沿い

再び中央道路沿いに戻りましょう。ホオノキの左側、細い道をこえた所に、ブナ科のコナラQuercus serrata Murrayの林があります。わずか3本の林です。並木のケヤキが伸びる前は、このコナラの林が明るい林を作っていました。ケヤキが伸びてここは暗い林になってしまいました。 まだ、落ちた葉を拾ってみると、明らかな葉柄があります。小枝は灰褐色で、1年生枝は直径2〜5oで、細くスイとのびています。 木肌は灰白色で、不規則に縦に割れ目ができています。まだ、落ちた堅果がたくさん拾えます。1月に入ると、これらのドングリは1個も見あたらなくなります。きっとネズミが拾って持って行くものと思っています。 コナラの小枝をカミソリで切って見ると、ミズナらと同様な星形髄が見られます。

コナラ

中央道路の左側に、ブナ科の常緑樹であるスダジイCastanopsis sieboldii (Makino) Hatus. ex T. Yamazaki & Mashiba があります。 この木はかつてここにあった林の中の木でした。薬草園を広げるに当たって、他の木は全て切り倒されて持ち去られ、この木だけが残されたものです。 さらに中央道路が作られて現在の位置に取り残されたのです。枝を四方にのばしていますが、何度も太い枝が切り落とされ、さらに整枝されて現在の姿が保たれています。

    

メディアセンターの前には、イチイ科のキャラボクTaxus cuspidata Siebold et Zuccarini var. nana Hort. ex Rehderが植えてあります。 キャラボクは枝が斜上する傾向が強い木です。ここでは丸く刈り込まれてしまっています。

     

メディアセンターの前に、モクセイ科のヒイラギOsmanthus heterophyllus(G. Don) P. S. Greenが、小さな白い花を咲かせています。 ほのかに甘い香りがするのはこの花の精ですね。同じ科のキンモクセイよりも上品な香りがします。

  

ヒイラギの前にカツラ科のカツラCercidiphyllum japonicum Siebold et Zuccariniがあります。 10年経ったら、おそらくこのカツラがケヤキをこえて背の高い木になっていることでしょう。 つい、ひと月ほど前には、黄いろく色づいたハート形の葉がゆれていました。ある日、いっせいに全部の葉が落ちてしまいました。 幹はまっすぐに天に向かってのびています。細い枝は規則正しく対生しています。 時に、対生する枝が枯れ落ちて互生状にも見えることがありますが、規則正しい対生です。 頂芽を見ると2個の円錐形をした頂芽が見られます。これらの芽がそれぞれ伸びて枝を作ります。 したがって新しく生じる枝は叉状に分枝します。しかし、叉状にのびた枝の上方にのびた枝が強くなります。 かくして幹は1本の直通となります。一年生枝を見ると、すべて対生して側芽をつけています。 細い枝を触ってみると、葉痕が隆起していることがわかります。その葉痕は縦に並んでいることもわかります。 そこをルーペで見ると、3個の維管束痕が見えます。さわってみると、たくさんの皮目があることがわかるでしょう。

 
カツラ
  

メディアセンターに入る階段の向こう側にはツバキ科のオトメツバキCamellia japonica f. otome Makinoが蕾をつけています。ツバキの生長は著しく遅い。 上に伸びるのは早くても10cmをこえるまでにゆうに100年はかかると言われます。 ここにあるオトメツバキはキャンパスの中でもっとも老齢の樹です。一年生枝はとても短い。 しかも、1年生枝にしか葉がついていません。そして、1年生枝の上にしか蕾がついていないのです。 蕾と葉の間、葉腋に小さな芽が見られます。これが来年の春にのびる枝の蕾です。常緑樹なのに数は少ないもの皮目も見られます。

マキ科のイヌマキが高くそびえています。その下に、バラ科のカリンChaenomeles sinensis (Thouin) Koejneがあります。 周りの木が生長してしまい、カリンにまで十分な日光が届かなく、毎年花をつけるのに果実はほとんどみのりません。 みのっても、誰かがさわり、そのために落果してしまいます。落ちている果実を拾うと、表面はねばねばしています。 香りが良いが、堅くて、酸っぱくて、生ではとても食べられないが、包丁で切り割って煮るとやわらかになる。

一枚の巨大な葉を広げているのはウコギ科のカミヤツデTetrapanax papyrifer(Hook.) K. Kochです。葉はヤツデの葉を巨大にしたような単葉です。 葉の表裏は褐色の綿毛に覆われています。暖かい地方では木になり、霜が降りるような地方では地上部が枯れ、翌年地上部が出てきます。 とすると草となる訳です。ここでは、カミヤツデの上が木で覆われているので木になっています。地下にはカミヤツデの地下茎が縦横に発達しています。 春になると、近くのあちらこちらから芽を出して瞬く間に巨大な葉をひろげます。地球の温暖化が進むと、カミヤツデが大いにはびこることでしょう。 葉の大きさに負けない大きさで、傘を上向きに広げたような白い花序を開いています。1個の花は小さく、花序の枝先に密についています。 萼は小さく目立たず、5枚の花弁反り返らせ、5本の雄蘂をのばし、雌蘂の柱頭は5本突き出しています。

カミヤツデ

隣の花壇には同じウコギ科のウドを植えてありますが、ウドは花を開き、果実を実らせると、地上部は枯れてしまいます。 すなわち草です。枯れ残った地上部が立ち枯れて残っています。

    

カミヤツデが巨大な単葉を広げていますが、さらに隣にある同じウコギ科のタラノキAralia etata Seemannは木です。 夏には巨大な2回複葉を広げていました。夏にカミヤツデのような花序をつけて、秋には枯れ残っていました。 山野に入ると刺の多いタラノキが多く、タラノキの芽を摘むのが大変です。とても素手では枝をつかむことができません。 ここに植えてあるタラノキはメダラAralia etata Seemann var. canescens Nakaiとよんでいます。 あの大きな葉をつけた枝は直径1〜2cmもあります。葉痕はその馬蹄形で太い枝をぐるりとつかんでいます。 ウコギ科の多くの種は、一年生枝の頂に果軸を形成します。果軸は花後果実を実らせると落花してしまいます。 そこには大きな果軸痕が残ります。冬芽は、赤みがかった褐色の芽鱗に包まれ、仮頂芽とよばれる親指の先ほどもあってこれが翌年の枝芽となります。 カミヤツデの花序の基部を見上げると仮頂芽がすでに開いていることを見ることができます。 しかし、この芽は霜には弱く、生き残れるかどうか疑問です。

     

イヌマキの後ろに、ブナ科のブナがあります。夏には主脈と側脈が明確でかさかさと乾いた手触りの緑の葉を広げていました。 11月中は黄色く色づいていました。12月に入ると葉は乾燥してわずかに内側にそりかえりながらなおも枝にしっかりとついています。 1年生枝は1.5oと細く、二列互生して冬芽を生じ、ゆるやかにジグザグに曲がっています。 冬芽は被針形で、先はするどく尖り、芽鱗はつやのある褐色です。 芽鱗は20〜25枚ほどで、密に重なり合っている。 冬にも枯れた葉が枝上に残り、木全体が枯れたように見えることから、あちらこちらに植えた木は何度も切り倒されてしまった。 そのために、いつも皆の目にふれるこの場所に植えたのである。成長すると高さ20mをこえる巨木になる。

ブナ

建物に隣接して太いサクラの木があります。バラ科のオオシマザクラPrunus speciosaです。 建物が建てられる以前からここに生育していたので、建物が建てられる時に建物側の枝が切り落とされて現在の姿になっています。 サクラの木は生長が早い。一年生枝を見るといずれも40cmをこえています。つやのある灰褐色で、縦にひび割れを生じていることもあります。 冬芽はわずかにズレながら互生し、葉痕は隆起して長卵形、先はとがり、枝の下にあるものほど小さい。 頂芽は最も大きく5稜あり、長さ5〜7oあり、10枚ほどの芽鱗が密に重なり合い、赤紫〜褐色をしています。

 

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