キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達(冬のすがた)

理学部I号館周辺

理学部I号館の温室のうしろに、大きな照りのある葉を広げた常緑樹のモクレン科のタイザンボクMagnolia grandiflora L.があります。

泰山木と書くと、いかにも中国原産のように思われますが、北アメリカの原産で大西洋岸南部諸州に多い木です。 ここは土が浅く、乾燥しやすく、ここに植えられたタイザンボクはすぐに枯れてしまいました。 そこで、土を高く盛り、毎日しっかりと水をやり、ようやく根付いてくれたのです。これほどまでに大きく成長するなどと、予想もしていませんでした。

根元に、やはり常緑樹のジンチョウゲ科のジンチョウゲDaphne odora Thunb.が赤紫色の蕾をつけて、温かくなったらいち早く花を開く準備をしています。 枝は叉状、3叉状、4叉状一体どれが正しい分枝なのでしょうか。一年生枝を見ると、今年生じた葉のほとんどが詰まった状態で上を向いています。 葉の根元には枝を生じる芽が隠されているいるはずです。枝の頂に花軸がついて、花を咲かせたあとにこれが落ちて伸びた枝のいくつかが残っていることになります。 芽鱗痕の数だけ花が咲いたともいえるでしょう。そうしてたどると、芽鱗痕の数をたどらなくても分枝の数をたどると、この木の年齢を数えることができるでしょう。

バナナ科のバショウの手前に、バンレイシ科のポポーAsimina triloba (L.) Dunalがあります。 背丈は7〜8mになるのですが、台風が来るたびに上部の枝が折れてしまい、あまり樹形の良い木ではありません。 北アメリカ大西洋岸の湿地帯に自生する木で、現地では他の木に混じって多くは斜上しています。11月にはホオノキの葉よりは小振りですが、イヌビワのように黄色く黄葉していました。 12月に入るといっせいに落葉してしまいました。後に褐色の細い一年生枝がニョキニョキと立っていました。 木肌は明るい褐色で、ビロウドのような手触りの濃い褐色の芽をつけています。 毎年、葉の出る前に、カキ科のカキのような花をつけます。果実は緑色でアケビのような形と大きさとなります。 熟すると黄色となり、甘い芳香を放ちます。アイスクリームのような甘さがあり、中に柿の種子そっくり大きな種子がいくつか入っています。 撒くと容易に発芽します。

フヨウ科のフヨウは、つい先日まで花を見せていましたが、最後の風で吹き飛んでしまいました。 温室の前にスイフヨウ、理学部T号館側に白い花のフヨウと、赤い花のフヨウがあります。 フヨウは、温かい地方を好むらしく、芽吹きがとても遅いのです。 台風のたびごとに倒れ、立てても、立ててもたおれ、倒れたままにしておくと根元からひこ苗がでてきます。

中央道路に帰ろう。

温室の花壇に生えているのはクルミ科のオニグルミJuglans ailanthifolia Carriereです。 夏の間の強烈な日光をいくらかでも遮ろうと、花壇にオニグルミを植えたというものの、クルミの勢力は強く、日光をすっかり奪ってしまうのです。 さらには、春から葉のある間中、アメリカシロヒトリが大繁殖して、下を歩く学生たちのうえに糸を引いて下りてくるのです。 何度も太い枝を切ったものの、すぐに芽生えてきて伸びてゆきます。強靱な木です。 よく成長すると高さ20mをこえ、太さも50cmをこえる大木となります。 軽井沢山荘の庭に生えていた木の種子を撒いたと伝わっています。 一年生枝は直径5〜7oあり、灰色がかった褐色でつやがあり、小さな丸い皮目がたくさんあります。 葉痕は大きな葉を生じていただけに大きく、隆起し、特徴的な猿面形で目鼻に相当する維管束痕があります。 冬芽は黄褐色で軟毛で覆われ、チョコレート色をし、特に頂芽は目立って大きい。

花壇には皇帝ダリアDahlia imperialis Roezl. が植えてあります。 5年ほど前から街中で高さ5mにも達する巨大なダリアがピンクの一重の花をたくさんつける姿が見られるようになりました。 木立ダリアとか、帝王ダリアとも呼ばれる草本性植物です。キク科のダリアの仲間です。 習志野キャンパスでも、薬草園で大きな株があり、今、花が盛りです。ところが、ここに植えてあるものは、今年の春に、やはり皇帝ダリアとして購入したものです。 小さなポット苗として購入してたっぷりの堆肥を埋め込んでこの小苗を植え込みました。ずいぶんと成長が早く、8月には支柱が必要となりました。 竹の支柱を立てたのですが、支柱をはるかに越えて高さ3.7mに達しています。太さも、3cmをこえています。 ところが、花をつける気配が無いのです。10月末の寒さに、頂き近くの葉が枯れてしまいましたが、その後も成長を続けています。 薬草園の皇帝ダリアは葉が二回羽状複葉です。ところが、このコウテイダリアは葉に切れ込みのある掌状の単葉です。 3指だったり、5指だったりして、羽状複葉のものとは異なるのです。どんな花を咲かせてくれるのかとても楽しみにしていますが、冬の霜にも打ち勝ってくれるかどうか心配もしています。

 
コウテイダリア

隣の花壇には、アジサイ科の八重アジサイと、同じアジサイ科の隅田の花火を植えてあります。 隅田の花火は、花殻もなくなっていますが、八重アジサイの方は、萼が青みを帯びた灰色に、褐赤色が重なり、まだ元気に見えます。 葉は霜にやけて灰青色に変わっているところもありますが、まだまだ見栄えのする姿です。

その隣は、イヌシデにアケビ科のミツバアケビAkebia trifoliata (Thunberg) Koidzumiが絡まっています。 アケビは蔓性の植物です。自分では立ち上がって木になることはありませんが、持ち前の蔓をのばしてからみつき、からみついた植物の頂にまで達して光合成を行う植物です。 からみついた茎を見てください。からみつかれたイヌシデの樹形が変わるほどにしっかりとからみついています。 ミツバアケビの蔓をはがすと異様な姿のイヌシデが現れるに違いありません。ミツバアケビの森林破壊の典型として見てもらうことにしています。

 

 

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