東邦大学へ メディアネットセンターへ バーチャルラボラトリへ
薬草園の世界
東邦大学名誉教授
小池 一男

■□■アオノリュウゼツラン■□■

アオノリュウゼツラン(Agave americana アガベ・アメリカーナ)はリュウゼツラン科の単子葉植物で、その特徴のある姿から観賞用や商業的用途で栽培されることの多い北アメリカ南西部原産の植物です。
棘のある葉の形を竜の舌に例えたことから和名を「リュウゼツラン」と呼ばれています。

一世紀(100年)に一度だけ花を咲かせて枯れてしまうので、英語で「センチュリー・プラント(century plant)」と呼ばれますが、実際には日本では30年から50年に一度開花します。

■□■ 昔々。マヤの人々の民間療法 ■□■

かつてアステカやマヤの人々は、創傷治療の技術に長けており、アガベの樹液を傷口に塗るために、ペーストやパップに樹液を混ぜて使用していてようです。
下痢や赤痢治療には、アガベの樹液と新鮮なトウモロコシや他の植物を混ぜ、小動物の膀胱と中空の骨やアシからできた注射器とを使い浣腸として投与していたといわれます。

■□■主成分と注意■□■

【使用部位】
樹液
【主成分】
エストロゲン様イソフラボノイド、アルカロイドほか
【注意】
妊娠中に使用してはならない。
消化器の炎症や肝臓の障害が予想される量を超えてはならない。
外用は皮膚炎の原因となることがある。

■□■食用■□■

メキシコのお酒:テキーラ

アガベの葉を取り去って、パイナップルのような形をした株の部分から樹液を絞り、発酵・蒸留したものをメスカル(mezcal)と呼びます。その中でも特に、アガベ・アスール・テキラーナというリュウゼツランを原料にして特定の産地で製造されたものがテキーラです。

■□■生育 ■□■


▲2005年7月8日撮影
先端が校舎の3階に届きそうです(7月15日現在)

長い年月を鋸状の棘を有する葉、30−60枚ほどの密なロゼット状(※)で過ごし、花茎をぐんぐん伸ばして巨大なサイズに成長した後、蓄積した栄養分を一気に使用して開花します。円錐花序に緑がかった黄色の花を沢山つけるのが特徴です。
木質化した朔果が熟すと、先端から根元の方に向かって枯れてゆき、枯死します。
このような植物を「一回結実性植物」といいます。

※立ち上がる茎が無く、地下茎から放射状に拡がって地面にへばりついている状態

■□■ 蕾 ■□■

習志野キャンパスのアオノリュウゼツランがもう少しで開花しそうです。


▲2005年7月8日撮影


▲2005年7月19日撮影

下から順番に開花し、現在は中ほどまで緑がかった黄色い花が開いています。


▲2005年7月28日撮影

参考:『世界薬用植物百科事典』(誠文堂新光社)
『朝日百科 植物の世界』(朝日新聞社)


■□■ 葉 ■□■

葉は肉厚で、鋸状の棘を有します。


▲2005年7月8日撮影

葉縁の鋭い棘。


▲2005年7月8日撮影