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薬草園の世界
東邦大学名誉教授
小池 一男

8月-August-


ヤブガラシ

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ハマヒルガオ

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ウコン

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ホタルブクロ

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クマヤナギ
(実)
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ホタルブクロ

キキョウ科 ホタルブクロ属
学名 Campanula punctata

 東アジアの温帯に分布し、国内では北海道から九州の山野に生える多年草。白色または淡紅紫色の花を咲かせる。花期は初夏。

 名前の由来は、‘ホタルが現れるころに咲くため’、‘子どもがこの花に捕まえたホタルをいれることから’、‘「火垂る袋(ホタルブクロ)」つまり提灯に似ているため’など、諸説あります。

『日本植物方言集成』(八坂書房編)には、‘ほたるかご’、‘からすのちょーちん’、‘きつねのとーろー’をはじめ、130以上もの方言が集められています。その数の多さから、古くから日本人に親しまれてきた植物であることが伺えます。習志野キャンパスのある千葉県からは6つの方言が集められているので、ここでご紹介します。
 ・じゃらんぽん ・ちょーちんばな ・とっくりばな
 ・とっこばな ・ぽんぽんくさ ・ぽんぽんばな
音の鳴りそうなものや、納得の名づけなど、いずれも親しみを感じる呼び名です。夏の夜、この花から淡く溢れ出すホタルの光が、ほんのりと闇を照らす様子を想像すると、暑さを忘れられそうな気がします。

7月-July-


トウワタ

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ユリ

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ネムノキ

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オミナエシ

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チユウキンレン

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オミナエシ

スイカズラ科 オミナエシ属
学名 Patrinia scabiosifolia

 晩夏にはすでに咲いている、最も早い秋花のひとつで、地方によっては盆花としても利用されています。黄色く小さい花を、長く伸びた茎の頂にたくさんつける姿が、なよなよと優しく優美なためか、昔からよく女性、美人にたとえられてきました。
 秋の七草として有名なオミナエシですが、オミナエシを「秋の七種」に最初に数え上げたのは山上憶良だそうです。‘萩の花 尾花 葛花〜’と、『万葉集』に有名な歌がありますね。

 『四季の花事典』(麓次郎著/八坂書房)によれば、「女郎花」と書くようになったのは延喜年間(901-922年頃)のころからであり、万葉の時代には、その書き方は一定していなかったといいます。例として、娘子部四、姫押、娘部思、娘部志、姫部志、佳人部為、美人部師、女部芝、乎美那閉之などが挙げられています。
 また、類書『古今要覧稿』の中で編者の屋代弘賢(やしろひろかた)は、万葉人がオミナエシにあてた漢字「娘部志、姫部志」などを例に挙げ、「按に、姫といひ、娘といへるは、すべて女郎といへるにその意一つなり」と記しています。麓次郎先生は『四季の花事典』の中で、この部分を指し‘これはオミナエシが中世以降「女郎花」に統一されて書かれるようになったひとつであろうか。’と結んでいます。
 女郎花と書いてオミナエシと読む。面白いですね。

レッドデータ
 国内の18府県で絶滅危惧種〜準絶滅危惧種に指定されています。東京都の区部では絶滅種とされています。

6月-June-


ガクアジサイ

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カギカズラ

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アザミゲシ

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アメリカデイゴ

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ニホンタンポポ

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タンポポ

キク科 タンポポ属
学名 Taraxacum

 ‘タンポポ’はキク科タンポポ属の総称。
多くがユーラシア大陸に自然分布する。日本全国に分布する在来種は20種ほどで、地域により種が異なる。

 食用としては、根を利用して作られるタンポポコーヒーがメジャーでしょうか。若葉を茹でて、おひたしや和え物にするほか、フランスではセイヨウタンポポをサラダ用に改良した品種が栽培されているそうです。

 タンポポの茎や根を傷つけると白い液が出ます。この乳液からは、ゴムが採れるといいます。
 現在、自動車のタイヤのゴムには主にパラゴムノキからとれるゴムが原料として使用されています。このパラゴムノキの代用として期待されているのが、タンポポの一種で「ロシアンタンポポ」という品種だといいます。 研究が進められており、2012年には国内企業からニュースリリースが発表されています。完成した暁には、タンポポを模したデザインのホイールをつけた自動車やタンポポ色の自転車が街中を走ったりするのでしょうか。今はまだ空想の世界ですが、そう考えると楽しいですね。

5月-May-


トビカズラ

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アブラウツギ

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ハナビシソウ

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オトコオミナエシ

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ニンニク

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ニンニク(大蒜)

ヒガンバナ科 ネギ属
学名 Allium sativum

 中央アジア原産。畑で栽培される多年草で全体に強烈な臭気がある。高さは60cmほどになる。鱗茎は鞘状葉をかぶり、内に小鱗茎を含む。
花期は夏。先がくちばし状に長く伸びる総苞葉に囲まれて散形花序を足し、白紫色の花を咲かせる。花の中にむかごが混じることがある。種子は結ばない。鱗茎を食用にする。

 和名「ニンニク」は、仏教用語「忍辱(にんじょく)」が転じて「ニンニク」になったという説があります。本来仏教では「五辛」を食することを禁じていますが、これを忍んで食べたことを指して「忍辱」と呼ばれるようになったといいます。
 Wikipediaによると「五辛」とは、ニンニク、ニラ、ネギ、ショウガ、ラッキョウをさしますが、ニンニク以外の4種は、ラッキョウやアサツキ、ノビル、エシャロット、アギなどといったものが並ぶなど、諸説あるようです。いずれもニンニクは外せないのですね。(詳しくはこのページの下段、参考WEBサイトより「みんなの仏教WEB大学校」−コラム 避けるべき食事「五辛」をご覧ください。)

 古い書物に目を向けると、『古事記』にニンニクに関する記述があります。
 倭建命(ヤマトタケルノミコト)が時の天皇の命を受けて東国を平定した帰り道、足柄山の険しい峠で疲れて食事をとっていました。すると、その坂の神が白鹿の姿に化けてやってきました。坂の神は敵意を持っていたのでしょうか。倭建命が食べかけの蒜(ヒル)を投げつけると、目に当たり、白鹿は死んだといいます。この蒜がニンニク、あるいはニンニクに近い作物とされているようです。 (詳しくは、「新編日本古典文学全集1 古事記」(山口佳紀・神野志隆光校注 / 訳小学館)、「ニンニクの科学」(齋藤洋監修 / 朝倉書店)をご参照ください。)
 古事記が編纂された712年には、既に、ニンニクが疲労回復を期待できる作物として重用され、また目に汁が入ると、とても辛いことが知られていたことが伺えます。

4月-April-


リキュウバイ

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チョウジザクラ

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ハンカチノキ

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レッドクローバー

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マルメロ

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マルメル、メロメロ、マルメイラ。呪文のような呼び名が並ぶ樹木、マルメロ。

バラ科 マルメロ属
学名 Cydonia oblonga

 マルメロはイラン、トルキスタン地方原産の落葉高木。高さ4-8mほどになる。花期は晩春から初夏。果実は5-7cmほどで、芳香を放ち、越冬する。食用の他、実をかごなどに盛り、室内に置いて香りを楽しむこともある。

 日本へは寛永11年(1634年)にポルトガル船によってもたらされたとされています。カリンに似ているため導入時にカリンと誤称した例もあるとか。マルメロは、葉に鋸歯がないこと、果実に細毛があることでカリンと区別ができます。長野県産のカリンジャムのラベルには「かりんジャム(マルメロ)」と書かれているものがあります。よく見ると「昔から「マルメロ」を「カリン」と呼んでいます。」ともあります。ネットショッピングの画像を見ているだけで甘い香りが漂ってくるような気がします。国内の主な産地は長野県、青森県、北海道など。少し寒冷な環境が適しているようです。別名は西洋カリン、マルメル、マルメイラ、カマクラカイドウなど。青森の一部地域ではメロメロなのだそうです。良い香りがしますからね?

 ポルトガルではマルメロのジャムをマルメラーダと呼びます。同じ名前のお菓子もあり、果実を柔らかく煮て煮汁と分けた後に、ペースト状にして砂糖を加えて加熱します。バットなどに広げ、数日〜数週間をかけて乾燥させて出来上がりです。名前は、カイシャ・ダ・マルメラーダ (caixa da marmelada「マルメラーダの箱」)。このお菓子は江戸時代に日本へ伝えられ、caixa(カセイタ)の呼び名が採用され、「かせいた」の名で当時のレシピが残されています。また、1751年頃の随筆には「カセ板」と記されています。老中・松平左近将監のお気に入りのお菓子だったそうで、熊本藩細川家からは、毎日のように献上されていたとか。高価で貴重な食材だった砂糖をたっぷりと使った「カセ板」は、それは美味だったことでしょう。残されたレシピによると、分量は、マルメロ3.75Kgに対し、砂糖3Kg。とても甘いと想像できますね。数日をかけてお菓子を作るスローライフ、少し憧れます。

番外編  ハンカチノキの実は 2021年11月のカレンダーでご覧いただくことができます。

3月-March-


ハナダイコン

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サクラ
(ソメイヨシノ)
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ミスミソウ

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フリチラリア

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ショウジョウバカマ
(素心)
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ショウジョウバカマ

 早春の雪解けの音を聞きながら日の当たる沢沿いの林床を散策する。他の植物に先駆け、花を咲かせる。淡紫〜濃紫色の花が咲き、群生地の斜面が紫色に見える。その中で色変わりがないかと探すが、みな同じような色。私の経験上、群落の中では花色の変化が少なく、数株で自生している場所に有る場合が多いように思う。白花に会えた時は、やはり数株の、ひそかに生えている中に咲いていた。それも初夏の若草に囲まれて。
 変わり花に会うとテンションが上がる。しばらく見入ってからどう撮るかを考え、撮る。植物は動かずそこにいてくれるので、つい時間をかけてしまう。そんなことを思い出し、この栽培品をどう撮るか試行錯誤し、やっとこの写真を撮った。これだけの完全素心は自然界で会えることはまず無いであろう。素心のショウジョウバカマは自然界では幻の花である。

薬草園スタッフ 川上

シュロソウ科 ショウジョウバカマ属
学名 Heloniopsis orientalis

 日本各地の山地で少し多湿なところにはえる常緑の多年草。
ロゼット状に広がった艶のある葉の中心から花茎を伸ばす。花期は春。高さ17cmほどに伸びて、花茎の先に20mmほどの花を総状花序に数個〜15個つける。葉が傷ついたり、先端が地面についたりすると、 そこから不定根と不定芽を出して増えたりもする。和名は、花を空想上の生き物猩々の赤い顔に、重なった葉の様子を袴に見立てたことが由来という。

 スプリング・エフェメラルと呼ばれる植物たちのひとつで、方言に「ゆきのした」、「ゆきわりばな」、「ゆきわりそう」などがある。

2月-February-


オオイヌノフグリ

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ヒマラヤユキノシタ

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フサアカシア

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エリカ

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アカフキ

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フキ

キク科 フキ属
学名 Petasites japonicus

 日本や朝鮮半島、中国に分布。
山野の湿った林下にや道端にはえる多年草で、各地で食用に栽培される。

 早春に地下茎の先に独立した花茎を出し、開花する。花後、花茎は身にまとった鱗片葉を交互に広げながら高さ40cmほどに伸びる。独特な形をした普通葉は地下茎から伸びてくる。煮物などに利用される葉柄の長さは30〜80cmほど。若い花茎をフキノトウといい、葉柄とともに食用、薬用に用いる。
 食用として国内に流通する栽培品種の大半を愛知県産が占める。「愛知早生ふき」といい、自生するフキに比べ、特有の苦みやアクが少なく、やわらかい。

 フキの変種にアキタブキがある。和名の由来は秋田に自生したことによる。東北地方から北海道にかけて自生し、葉柄は1〜2m。葉の直径は1.5mにもなる。アイヌの小さな神様コロボックルは、アキタブキの葉の下に隠れ、道行く人に悪戯をしたり、手助けをしたりするという。‘コロボックル’はアイヌ語で「フキの葉の下に住む人」の意味。

 葛飾北斎は、アキタブキの大きな葉を傘代わりに被る人の様子を描いている。国立国会図書館デジタルコレクションでは、明治11年に出版された北斎漫画の中に掲載されている「出羽 秋田の蕗」を閲覧することができる。
[WEB “国立国会図書館デジタルコレクション”のページへ移動します]
 北斎漫画.7編 岩崎常正 著 (本草図譜刊行会) 20/34ページを参照 

フキの花は 2013年3月のカレンダーでもご覧いただくことができます。

1月-January-


ホトケノザ

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デンドロビウム

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フクジュソウ

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ナンテン
(実)
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ユリノキ
(花後)
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ナンテン 難を転じて福となす

メギ科 ナンテン属
学名 Nandina domestica
和名 南天(ナンテン)

 山林中にはえ、庭にも植栽される常緑低木。日本では関東南部以西、四国、九州に分布する。中国原産の一属一種の植物で、この園芸品種はナンテン自身の変異性から派生したものとされる。
 欧米には分布しておらず、1690年に来日したドイツ人医師ケンペルがナンテンを知り、その美しさを激賞したという。描画・記録をして帰国したが公表出版せぬうちに逝去。それからおよそ80年後に来日したスウェーデン人植物学者ツュンベリーによって出版された『日本植物誌』に彼の遺稿と図が収載された。その遺稿でケンペルが、ナンテンを「ナンディン」と名付けていたのを尊重し、ナンテンの属名はNandinaと命名され現在に至る。

 ケンペルを魅了した美しいナンテンは、音が難転(なんてん)に通ずることから「難を転じる縁起の良い植物」として敷地の鬼門や裏鬼門、厠のそばなどに植えられてきた。現在でも新年を迎える縁起物の準備として、生け花の花材、掛け軸のモチーフとするなど正月飾りには欠かせない植物でもある。

 「難転」を願う気持ちは、古くから生活の様々な場面でナンテンを登場させてきた。戦に赴く武士の戦勝・凱旋と無事を願うときや子どもの元服の儀式では床に枝を挿し、悪夢を見た翌日、あるいはお産のときには枕の下にナンテンの葉を置くなど、難を転じたいと強く願う折りに用いられたという。そう聞くと、ナンテンがとても魅力的な植物に思える。現在、縁起物として利用するナンテンといえば、やはり花材が一般的だろうか。そういえば、新年を前に花屋の店頭に置かれた寄せ植えの鉢にも可愛らしい赤い実が光っている。そうだ、今日は花屋を覗いて帰ろう。

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Copyright Kazuo Koike
著作権者 小池一男

Copyright Medicinal Herb Garden, TOHO Univ.
著作権者 東邦大学薬学部付属薬用植物園

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参考図書

参考Webサイト

参考資料

‘PICK UP’ 回顧録ほか、コメント : 薬草園 川上

‘PICK UP’ 文責 : 習志野メディアセンター(バーチャルラボラトリ担当)