私が初めてスモークツリー見たのは約55年前。今では結構人気があり8種ほどが市場に出回っているが、その頃は1品種のみ。普通の白色の品種だった。それでも初めて目にする本物のスモークツリー。当時の‘世界の植物図鑑’でしか見ることができなかったものが、なんとタキイ種苗で売り出されたので、すぐ手に入れた。
最初の苗はあまりに小さく冬を越せず枯らした。2年後に再チャレンジをしてどうにか栽培に成功し、3年目に初めての花を見た。この木からどんな風に花芽が出てくるのか、楽しみに待っていたのだ。
念願の花をじっくりと見る。一見どこが花か判らない。初めて見る花の鉢植えを大事に枕元に置き、寝るまでその不思議な花を見ていた。そんな懐かしい思い出が蘇る。意図せず部屋にダンゴムシを持ち込み母親に怒られた。「ダンゴムシでは死なない」と反論していた記憶がある。言い出したら人の意見は聞かない子供だったのかもしれない。
現在は品種改良により、花穂の短いスモークツリーや、花穂の長いもの、銅葉で赤花、矮性種など、色々なものが出来てきた。今は誰でも珍しい植物を普通に見ることができる。昔では考えられない時代になった。
薬草園スタッフ 川上
ウルシ科ケムリノキ属
学名 Cotinus coggygria
ヨーロッパ南部からヒマラヤ地方、中国を原産とするウルシ科の落葉低木。高さ3〜5mほどになる。日当たりと風通しの良い環境を好み、水はけの良い土地で良く育つ。雌雄異株。花期は6〜7月頃。長さ20cmほどの円錐花序をつくり、枝先に径3mmほどの小さな花をつける。
雌花の伸びた花茎がふわふわとして煙のように見えることからスモークツリーという名がついたと言われる。和名はケムリノキ、カスミノキあるいはハグマノキ。
ハグマノキ
‘白熊の木’と書いて‘ハグマノキ’と読みます。仏具にゆかりのある言葉です。仏教の法要の際に僧が振る、ふさふさとした毛のついた道具を見たことがあるでしょうか。払子(ほっす)といいます。払子の毛束の材料は、もとはチベットに生息するヤクの尾の毛が使われました。赤い毛で作られたものを赤熊(シャグマ)、黒い毛を黒熊(コグマ)、そして白い毛を白熊(ハグマ)と呼びます。古くは、遠くインドで用いられていた道具で、殺生を禁じられた僧が蚊や蠅などの虫を追い払うために使われました。スモークツリーの枝先のふさふさとした様子が白熊(ハグマ)に似ていることから白熊の木(ハグマノキ)と呼ばれるのだそうです。
