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薬草園の世界
東邦大学名誉教授
小池 一男
魚の名前
▲テキストより、 『魚介の一字漢字一覧』
(クリックすると大きい画像が開きます)

■講師プロフィール

幕張プリンスホテル 和食調理部
中里 広一氏
(昭和40年生)

◆得意な料理は、寿司を握ることよりもお通しを作ること。

好きな食べ物:甘いもの、ごはん
飲み物:ビール、ウイスキー
趣味:スポーツ全般、パソコン
スポーツ:野球
好きなチーム:?

中里氏

▼以下、講座テキスト内容より、一部抜粋でご紹介いたします。

THEすし

今は、すしといってもいろいろなお店があり、まず回転ずし、普通の町の店(創作店、テイクアウト店、ファミレスすし店)そしてホテルのすし店。今の時代になって料金の安い回転ずしが多くなり誰でも安心して入れる店が出来てきました。ひと昔前では、値段が高いとか、いくら取られるか値段が書いていないとか、時価があるからとか、不安感がありました。多少今でもその傾向のあるお店があるため、そう思われがちなのかもしれません。

ガリ

 ところで、どこのお店へ行ってもすしを食べた時"ガリ"が付いてきます。

 これは、生ものを食べた後、お腹の中で、主に消化促進の効果があります。もちろん他にも、辛味成分による食欲増進、風邪などの薬としても大変良く用いられています。生姜は(焼きそば、お好み焼きなどの紅生姜、漬物用に味噌・醤油漬、そしてソースやジンジャーエールなど、いろいろ使われています。

 ガリと呼ばれる由来は、食べた時、口の中でガリガリと音がすることからと言われています。 昔の人々に知恵には、すばらしいものがたくさんあります。現代社会において、健康に生きるためには原点を見つめ直す必要があると思います。

ワサビ

 2つ目は、握り、巻物、刺身にはなくてはならないワサビについてです。このワサビは本山葵、チューブの山葵、粉のワサビなど、いろいろなワサビがありますが、一般的にはチューブや、粉ワサビになってしまいます。もちろん本山葵で食べるのが一番おいしく食べられるのですが手に入り難いです。

 本山葵は今でこそ伊豆地方、長野、岩手などで採取されますが。江戸時代には今の中央線中野、三鷹など多摩方面が山葵の主力であったそうです。なぜ伊豆方面になったかというと、江戸後半に中伊豆町の組合が取引の始まりとされているそうです。山葵の歴史は100年以上になります。

 

また粉ワサビですが、これは本物のワサビではありません。西洋ワサビ、洋からし粉、着色料などから出来ている、いわゆる人間が作り出した人工ワサビということです。 チューブ山葵は、本山葵、西洋ワサビ、香辛料、着色料などで作られている、いわゆる本物に近い人工ワサビということです。いずれにしろ、本山葵はどの家庭にもあるとは限らず、むしろ無い方が多いでしょう。高級品のため、本物に近いこのようなワサビが作られているわけです。

 そしてワサビには、食欲増進、殺菌、胃薬、いわゆる生ものを食べ、その悪い菌などを殺す効果があります。

 また、ワサビのクキが、春先から今頃までにかけ最近多く出ています。 これは、醤油漬、甘酢漬、ワサビ漬、などにして召し上がれます。

【クキワサビの漬け方】

 70〜80℃のお湯(余熱)をとれた湯でさっと湯がく、湯から上げ、密閉タッパに砂糖1〜2ハイを入れ、強く振る。長めに、からみアップで漬ける。

お茶

 3つ目は、お茶についてです。寿司屋のお茶と言えば煎茶になります。今は健康ブームでいろいろなお茶があります。何十種類ものお茶があり、特に中国茶が多く出回っています。

  簡単に寿司屋のお茶とは、握りを食べ、次に食べるときに口の中の脂やにおいなどの口臭を取るためです。もちろん他にも胃腸の洗浄、消化、解毒、血中脂質などがあるます。

 成分にはタンニン、カテキン、カフェイン、ビタミンCが多くあり、女性の方には美肌効果、風邪予防、血圧などを下げる効果があります。

 他には、お茶の佃煮とか、葉のふりかけ・天ぷらなども体に良いそうです。

 寿司屋の用語でお茶のことを「あがり」と言いますが、由来としていろいろあります。
 近所の人とかが「上がっていきなよ」、とか寿司店主が「お客さん上がっていきなさい」、とか「食事が上がったよ」=お茶、ということが語源らしく定かではありません。別の言い方として、出端、さしかえ、上りという言い方もあり、出端というのはご存知のように最初という意味で、さしかえ、上りは今でも良く言います。それと寿司屋の湯飲みはなぜ大きいかですが、昔、屋台寿司のころからのことで人手が無いことから、いちいち差し替えていられないこと、先ほどの話の中でも口の中の魚の味を取ってくれる為、お茶をたくさん飲んで寿司をたくさん食べてもらう為だそうです。

 そして、なぜ熱いお茶なのか?というと、ぬるいお茶だと口中の魚の油、クサミなどが取れず、むしろ、80〜90℃の熱い湯で入れたお茶で寿司を一つ、茶を一口、寿司を一つ、お茶を一口といったぐあいに飲むのが良いそうです。熱ければお茶も沢山飲めず、お茶でお腹もいっぱいになりません。
  寿司屋の湯飲みが厚いのは、手で持った時、熱くならないようにするためです。

寿司めしにする米の条件

 寿司めしには、ご飯が炊きあがってから、酢を合わせる為、吸水性の高い米でなくてはなりません。

 又、口に入れたとき、ご飯がホロッとくずれなくてはなりません。つまり、しっかりした米、デンプン構造がしっかりしているコシヒカリ系の米が最適であります。適度な粘りと、程良い硬さが一般的に条件とされています。

 もちろん店主によって、ササニシキ:コシヒカリ=3:7のようなブレンド米を使用する店もあり、ササニシキの店もあるでしょう。 ご家庭で作る時には、その米を使用するのが良いでしょう。当ホテルでは千葉県産の多古米、コシヒカリ100%を使用しています。

 また、寿司屋では、すし飯のことをシャリ(舎利)と呼んでいます。舎利の語源は、米を洗うときに出るシャリシャリという音であると言われています。

すし調理の技術と心構え

 技術を磨くことはもちろん、調理師としての清潔感、身なりを整え、店内を清掃することも重要です。

 すしの板前としては、料理師業としての技術を勉強するだけでなく、接客業としての技術も勉強しなくてはなりません。聞き手になったり、時には話し手になったりするからです。その為、教養と話術、いろいろな情報を身につけ、お客様と接しながら調理をしなくてはなりません。
  このことは、今の時代、すし業だけではなく、どの業界も同じかもしれません。