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薬草園の世界
東邦大学名誉教授
小池 一男

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※各植物の写真をクリックすると拡大画像が開きます。

 サンシュユ

サンシュユは早春、黄金色の小花が群がって咲くところから牧野富太郎博士はハルコガネバナ(春黄金花)と命名されたが、一般にはサンシュユ(山茱萸)と言われている。
サンシュユは享保7年に薬用植物として渡来したもので、現在では庭木として鑑賞されている。強壮・強精を目的に生果と焼酎で作った果実酒が用いられ、熟した果実の種子を取り除いて乾燥したものを、「山茱萸」と呼び、漢方製剤中の「八味地黄丸(腎気丸)」等に配合されている。

 アンズ

アンズは、葉や花、実もウメに似て、古くから果実が食用、薬用として重要な植物とされて来た。果実は缶詰、ジャム、乾杏の製造に、その副産物として出来た種子の杏仁からつくられた「杏仁油」は薬用・軟膏基剤・油性注射薬の溶剤、毛髪油、ポマード、クリーム、食用、石鹸の香料等に、脂肪を除いた種子から「杏仁水」を製造し咳止め、去たん薬とし、杏仁は漢方製剤中に配剤される。

 レンギョウ

レンギョウは古くから庭木として栽培されてきたが、薬用として渡来した植物。果実を連翹といい、『神農本草経』に収載され、古くから、漢方薬の要薬として、腫瘍の炎症の消炎、排膿を目的として漢方製剤に配剤されてきた。

 イカリソウ

イカリソウは春に碇に似た花が咲く。地上部を採集して乾燥したものを「インヨウカク*」といい、徳川時代には薬酒にして下半身が弱り冷えが原因となった症状に使用していた。一般には薬用酒として利用されている。

*インヨウカク:

 ゲンゲ

ゲンゲは俗にレンゲまたはレンゲソウと言われ、畦道や田圃に群がって咲き、春の風物詩の一つとなっている。レンゲは地力を付ける肥料、飼料作物および蜜源植物として優れた植物で、民間では全草を解熱、利尿等に用い、蜜は甘味料として製剤の原料、丸剤の結合剤に用いられる。

 タンポポ

タンポポは救荒植物として食べられてきた。全草をつぼみや花を付けている時に採取乾燥したものを「蒲公英」といい、古くから薬用とし、西洋でも同様に苦味健胃薬とした。蒲公英は民間で、催乳、胃カタル、乳腺炎等に煎じて用い、漢方では催乳を目的に漢方処方に配合される。またタンポポ・コーヒーは乾燥した根を焙じ粉末にしたもの。

 カキドウシ

カキドウシはカントリソウとも呼ばれ、山野路傍に生えている多年草で、花の咲いているころ全草を採取し乾燥したものを「連銭草」といい民間では強壮を目的に、小児の疳や感冒、糖尿に利用されている。

 カタクリ

カタクリは球根植物、山菜として若葉はゆでて、地下茎の球根はそのまま煮て食べられる。球根からとった良質のデンプンをカタクリコ(片栗粉)というが現在はジャガイモから製したデンプンをカタクリ粉と言っている。デンプンは丸剤や錠剤・顆粒剤の賦形剤として使用されている。

 ツバキ

ツバキは常緑高木、椿は国字で漢名は山茶。古代から鑑賞用だけではなく実用植物として利用されてきた。倭漢三才図会には、葉、茎を焼いて灰を作り、紫染めに使用する、との記載がある。種子からとれる油は、食用、薬用・軟膏基剤、頭髪用、燈火用や精密機械油等として使用される。

 カリン

カリンは中国原産で江戸時代に渡来したもので、果実は砂糖漬けや花梨酒にし、咳止めに使用される。乾燥した果実は「木瓜」として漢方処方に配合する。材は堅硬緻密で粘りが強く、色調光沢が美しいため、床柱、装飾的部品や家具指物等に用いる。

 ボケ

ボケは木瓜の漢字の音読みとの説がある。江戸時代から観賞用として庭木、盆栽、鉢植えの花木となっている。果実は香気が高く、酸味があるのでを薬用酒として咳止めに、乾燥した果実は「木瓜」として漢方処方に配合する。

 シドミ

シドミ、一名クサボケ。果実はボケの果実と同様香気と酸味がある。乾燥したものは、「和木瓜」といい使用されたこともあった。

 

 文章・写真は磯東洋医学研究所の鈴木堯先生の提供によるものです。