花見と言えばサクラを見に行くこととなっております。サクラには各地に古い銘木があります。これは稲作と関係があり、昔はサクラには田の神様が宿ると考えられていました。花の咲きかたで、その年の豊作、凶作を占い、その木の根元で豊作を祈り、なおらい(注1)をしたことが現在の花見酒になっております。
麻酔手術をしたことで有名な華岡清州はさくらの樹皮を皮膚病の治療薬に配合し、十味敗毒湯を考案しましたが、江戸時代には、サクラの樹皮は、魚毒を解毒するとのことで魚、蟹(カニ)、蝦(エビ)などによる蕁麻疹(ジンマシン)の暖解(かんかい)に、一般に使用されてきました。従って金のない人が、安い酒を飲んで顔を赤くし、サクラの小枝を楊枝のようにくわえカツヲにあたったような振りをしたとの話もあります。
お祝いの席に欠かせないサクラ湯について、明治時代の外人チェンバレンは、「この浸液の芳香はすばらしいが、味はとんだ食わせ物である」(日本事物誌)と言っています。
(注1)なおらい:神祭の後、神饌や神酒を参加者で分かち合い飲食する行事
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