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薬草園の世界
東邦大学名誉教授
小池 一男

12月-December-


ナンテン
(実)
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ヤツデ
(実)
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チャノキ

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ピラカンサ
(実)
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センダン
(実)
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センダン

センダン科センダン属の落葉高木

 高さ7mほど。大木になることが多い植物で30mほどになることも。

 晩秋の秋空に黄色の珠が映えている。落葉後の枝に残る果実は、頭上に花の少なくなるこの季節に見上げると嬉しくなる。実のつき方が数珠を連ねたようにみえることから「千珠(センダマ)」と呼ばれる。
 花期は5−6月。別称に「クモミソウ」がある。‘雲見草’と書き、花の咲いている様子を遠くから眺めると紫雲がたなびいているように見えることからつけられた。来年の花期を楽しみにしたい。  

11月-November-


タバコ

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ツワブキ

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マユミ
(実)
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コダチダリア

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ホソバオケラ
(花後)
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マユミ ( 真弓 )

ニシキギ科ニシキギ属の落葉低木 別名:ヤマニシキギ(山錦木)

 秋に紅葉する実はとても美しく、「錦」の字を充てるのも納得の、温かみのある赤が印象的な植物。
 古く、材は紙の原料に用いられたが、後に楮などのより適した材にとってかわられ使用されなくなったとされる。また、その名の通り、弓材として使用された。繊維が密であるが柔軟性に富み、良くしなるので重用され、有史以前から使用されたものと考えられている。

 マユミをあらわす方言に ‘たまてばこ’ (京都府)がある。なるほど、あの可愛らしい実は何か素敵なものがつまっていそうな宝の箱に例えたくなるのも頷ける。だが、‘玉手箱’は確か開けてはいけない箱ではなかっただろうか。秋の夜長にこの方言の意味を想像してみるのも楽しいかもしれない。

10月-October-


キウィ
(実)
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イヌサフラン

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キンモクセイ

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キキョウ

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アキノキリンソウ

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キキョウ

キキョウ科キキョウ属の多年草

 秋の七草に数えられる。
 そのためか、秋の花という印象が強い植物だが花期は6月から9月ごろ、と長い。
 万葉集いく首かに登場し、色の名、あわせの色目の名になり、家紋になり、器の名、道具の名、部屋の名などにも使われる。
 万葉集が編纂された8世紀ごろの書物にはすでに ‘からくわ’、‘おかととき’、‘ありのひ(こ)ふき’など、いくつかの呼び名があったことが記されており、古くから人々に好まれて生活に深く関わってきた植物であることがわかる。

9月-September-


ハイビスカス

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フウセンカズラ

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クコ

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ハゼラン

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ウラシマツツジ

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フウセンカズラ

ムクロジ科フウセンカズラ属 北アメリカ原産のつる性の1年草(元来は多年草)

 小さな白い花の後に、まるく可愛らしい実をつける。
 和名「風船蔓」は、洋名の ‘balloon-vine’に基づき、膨らんだ果実が空中にかかっている様子を風船にたとえたもの。黒い種子には白いハート形の紋がある。これを子どもが喜んで拾ってくるので、気がつくと庭に生えている。属名 Cardiospermum[ギリシャ語]は、Cardio(心臓)と spermum(種子)の意。

8月-August-


ミネズオウ

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フジマメ

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イワイチョウ

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コマクサ

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ホオズキ
(実)
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ホオズキ / コマクサ

■ホオズキ : ナス科ホオズキ属の多年草
観賞用・食用として栽培されているもの、自生しているものがある。
漢字は「鬼灯」や「酸漿」をあてる。
読みの音の由来は、果実を吹き鳴らして遊ぶ子どもたちの様子から「頬突き(ほおづき)」と表現される、とも。

 そういえば、田舎の庭に自生していたホオズキの実を、近所の友だちと競って笛にしていたことを思い出す。
爪楊枝などの先で丸い実に小さな穴を開けて中の種を出し、きれいな皮一枚の笛に仕上げたいのだが、これがなかなか上手くいかない。 何度も挑戦するうちに口の中はホオズキのなんともいえない味でいっぱいになった。同じような経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないだろうか。
 そして時が経ち、現在。「鬼灯」の二文字の意味するところの、提灯を連ねたような静かな佇まいの一枚が遠い夏の日の思い出をそっと運んできた。

■コマクサ : ケシ科コマクサ属の多年草、高山植物

 30年位前の写真。草津白根山旧火口の1枚です。
 このコマクサは地元の山口雄平さんがご自分の畑をつぶしてコマクサ畑にし、自生復元のために地元の小学生達の手を借りて見事に復元されたものです。山口雄平さんは地元では「コマクサおじさん」と呼ばれていました。撮影時期は7月の下旬です。

7月-July-


ヨロイグサ

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アジサイ

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シラネアオイ

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キタダケソウ

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チシマギキョウ

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フィルムに収められた思い出の高山植物たち

[シラネアオイ] シラネアオイ科シラネアオイ属 1科1属1種で日本の固有種
35年前7月下旬。
今年も来たぞ、北アルプス雪倉岳、前日の登りが終わり今日からはお花畑を散策、雪渓の溶けたすぐ後に次々と咲く花たち、その1つチョツト花色変わりのシラネアオイが目に飛び込んでくる。朝からラッキー。

[キタダケソウ] キンポウゲ科キタダケソウ属 北岳にのみ咲く貴重な固有種
38年前7月上旬。
南アルプス北岳での早朝、ご来光を見に北岳山頂に行き「肩の小屋」に帰る途中。この日は冷え込み、7月だというのに霜が降りる。岳は油断できない。下から吹き上げる風で顔が冷たい。霜がたっぷり付いたキタダケソウ、朝日がもう 少しで当たるよと問いかけシャッターを切る。

[チシマギキョウ] キキョウ科ホタルブクロ属 高山帯の風衝草地や岩礫地に生える
36年前7月下旬。
北アルプス白馬岳、小雪渓の岩場、ザックを下し岩場を登り植物を踏まぬよう岩の上で足場を確認しながらいいアングルを探し接近し撮影。どんな風にとれたか想像しながら露出を変え何枚も。

6月-June-


ネムノキ

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ラベンダー

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シナカンゾウ

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ツユクサ

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クリ

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ツユクサ

 鮮やかな青色の花びらを摘んで、顔や手、紙に色をつけて遊んだ記憶のある人も少なくないのではないだろうか。子どもの発想というのはなかなか的を射ているもので、このツユクサの花弁から採った染料を和紙に染み込ませたものを「青花紙(あおばながみ)」という。古くから染め物の下絵に用いられてきたもので、水に溶けて消える性質を利用した逸品である。

 ツキクサとも呼ばれ「月草」などの字をあてる。
染料を採るために臼でついたことから。あるいは、布にこすりつけて色をつけたことから、と言われる。

 反物の下絵を描くには相当量の花弁を必要とする。利用しやすいよう、青花用に改良された花弁の大きなものが「オオボウシバナ」。確かにツユクサよりは摘み取り易いように思う。

5月-May-


ムラサキ

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カキ

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ラムズイヤー

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タチアオイ

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ニセアカシア

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鋭い刺を纏った侵略的な甘い彼女 「ニセアカシア」

和名 ハリエンジュ(針槐)
マメ科ハリエンジュ属の落葉低木 葉がエンジュに似ており、枝に長い刺を持つ
 1990年代に荒廃地緑化を目的に植栽されはじめた樹木。日本の侵略的外来種ワースト100に入り、要注意外来生物に指定されている。
 アカシア蜂蜜の原料。
 風味・食感にこれといった特徴がなく、クセがない。そのため、料理に用いても素材の邪魔をせず、利用範囲は広い。透明度が高い。

 「アカシア」とは、同じマメ科ネムノキ亜科アカシア属の、小さな球状の花が房状に垂れ下がった黄色い花の総称。この黄色い花たちは「ミモザ」とも呼ばれる。

 ニセアカシアの花蜜は糖度が高く、糖組成も果糖が高く蜂蜜に近いため、ミツバチの労力的コストが低く抑えられ、ニセアカシア蜂蜜の大量生産につながっているといわれる。他の蜂蜜に比べ果糖の比率が高いため、数年経っても結晶化しにくいというありがたい特徴がある。一般的に、蜂蜜は紅茶の色を変えるが、紅茶はその色も楽しみのひとつ。鉄分の少ないニセアカシアの蜂蜜では変化しないというからなんとも嬉しい食材である。蜂蜜をいくつか用意をしたら、3時のお茶の時間に試してみたい。

4月-April-


カイケイジオウ

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ヒメリンゴ

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ホザキノイカリソウ

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オキナグサ
(綿毛)
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ヤエヤマブキ

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呼び名はカエルから伝説の妖怪まで 「オキナグサ」

 キンポウゲ科の多年草。
 日本では、本州・四国・九州に分布。日当たりのよい山野にはえる。果期の姿は特徴的で、花柱が風に吹かれてゆらゆらと揺れる様はなかなか可愛らしい。

 和名「翁草」は、果期に白い毛が密生する花柱の集まる様子が、老人の白髪のようであることからついたもの。
各地の方言を調べてみると
  おじのひげ(青森・岩手) まりくさ(岩手) かわらのおばちゃん(福島) かえるっぱ(栃木)
  ねこ,ばばぐさ(長野) やまでらほーし(山口) ひめばな(大阪)  きつねこんこん(岡山)
  てんぐのもとどり(新潟) ・・・と、数えきれない。
見た目の印象からつけられた個性的な呼び名は カエルからキツネ・河原のおばちゃん・姫にお坊さん。果ては伝説の妖怪・天狗の髪型、と人の感性はさまざまである。

 漢名「白頭翁」は別種。

3月-March-


ニワウメ

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アブラナ

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アネモネ

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キブシ

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ヒマラヤユキノシタ

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アブラナ

  種子から油を採るために古くから栽培されている植物で、在来種とセイヨウアブラナの二種がある。
 別名 : ナノハナ, ナタネ
春に花をつける ナバナ,ハナナ,ダイコン などのアブラナ科の植物を 「ナノハナ(菜の花)」 と呼ぶ。

 写真の菜の花畑からは、唱歌の 『朧月夜』 や、与謝蕪村の句 『菜の花や月は東に日は西に』 が思い浮かぶ。
この情景は是非とも体験したい、と‘日の入り’と‘月の出’をで調べたところ、今年は3月21日・22日あたりがちょうど頃合いではないかと期待をしている(千葉県)。夕方に東西の視界の開けた土手などへ足を運んでみるのも良いかもしれない。

2月-February-


ソシンロウバイ

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シュンラン

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サンシュユ
(実)
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クリスマスローズ

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キダチアロエ

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キダチアロエ

 薬草園内、温室横の見本園松林にある。

 寒くなってきてアロエ達、蕾は着けてくれたがなかなか花が進まず
 やっと色が付き、いつ咲いてくれるかと待ち続け、今日は晴天
 どうだ、と様子を見に行くとやっと咲いてくれた4花。アップでパシャリ!

 南アフリカを原産とし、中国から伝わった植物。冬に開花する。
属名 アロエ( Aloe ) は、古いアラビア語のアローエ( alloeh 苦みがあるの意 )に由来し、葉に苦い汁液があることにちなんでつけられたものである。 和名を キタチロカイ(木立蘆薈)。
  中国では アロエ を「蘆薈( ろえ )」 と書き、そのまま日本に伝えられたものを音読みで「ロカイ」としたものが現在でも通名になっている。

  習志野キャンパス周辺でも民家の庭先に見ることができる植物ではあるが、ワシントン条約で輸出入が制限されている。

1月-January-


コウヤボウキ

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エリカ
(ジャノメエリカ)
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キンカン
(実)
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ユキヤナギ

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ハナミョウガ
(実)
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エリカの根からパイプが作られる?

 600種以上が確認されている常緑低木。群生してヒースランドを形成する。
写真は、学名:エリカ・カナリクラータ。

 ヒースというと、イギリス北部の灰色がかった荒野と某推理小説が思い浮かぶ。ホワイト・ヒースとも呼ばれる地中海沿岸に自生する「エリカ・アルボレア」(ブライヤ)の太い根からはパイプが作られる。40-50年以上の古い根は密度が高く、難燃性が強い材質であるといった特徴がパイプに適しており、木目の美しさが際立つ。
イギリス、ヒース、パイプとくればあの名探偵。小説の中にも「ブライヤ」が時折登場する。
“ブライヤ(brier)”は、英語で“茨、野ばらの茂み”の意。かつて“ブライヤパイプの材料=野ばらの根”と広まったが、これはbreirの和訳と、ヒースを形成する植物に野ばらがあることから、どこかで誤解が生じたものではないかと思われる。
実際に野ばらの根を掘ってみたところ、ブライヤを良く知る知人は首をかしげていた。という体験談も聞かれた。

著作権について

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Copyright Yoshiko Hosoda
著作権者 細田凱子

Copyright Medicinal Herb Garden, TOHO Univ.
著作権者 東邦大学薬学部付属薬用植物園

Copyright Media Net Center, TOHO Univ.
著作権者 東邦大学メディアネットセンター

参考図書

  • 図説 花と樹の大事典 (木村陽二郎監修/植物文化研究会編 柏書房)
  •  季節の花事典 (麓次郎著/八坂書房)
  •  日本植物方言集成 (八坂書房編)
  •  ニセアカシアの生態学 外来樹の歴史・利用・生体とその管理 (崎尾均編/文一総合出版)
  •  染め草の散歩道 (こきかほる著/山と渓谷社)
  •  ポケット図鑑 日本の高山植物400 (新井和也/文一総合出版)

参考WEBサイト

‘PICK UP’ 文責:習志野メディアセンター(バーチャルラボラトリ担当)