温泉微生物−バーチャルラボラトリ
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東邦大学 医学部 生物学研究室
杉森 賢司

環境省大臣表彰


第35回温泉関係功労者表彰 表彰式の様子と表彰状

 平成28年7月11日(月)に環境省第一会議室において「第35回温泉関係功労者」として環境省大臣表彰をいただきました。この賞は昭和57年より毎年「温泉の保護,温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止および温泉の適正利用に関し,特に顕著な功績のあった者に対してその功績をたたえる」といった主旨で毎年全国から数名の温泉関係者が表彰を受けています。

温泉生物学へのみち

 1982年(昭和57年)に東邦大学医学部生物学研究室へ着任後,日本温泉科学会の会員としても「温泉に生息する微生物」をテーマに34年間研究を進めてきました。環境微生物学や土壌微生物の研究者は農学や陸水学等への多岐にわたる分野で広く活躍されていますが,「微生物」と「温泉」をキーワードにした場合,レジオネラ症との関連でイメージ的に非常に悪く,温泉に生息する微生物を温泉関係者に説明するのに大変な苦労を強いられました。研究初期の頃,硫化水素臭のする中,硫黄泉の硫黄沈殿物を採取し,硫黄酸化細菌を培養した時,どうしてこの様な過酷な環境に彼らの生活があるのかといった生物学的な興味が私の温泉の生物学の出発でしたが,その様な研究自体,とても奇異な存在でした。pH1といった強酸性環境や100℃近い源泉の中にも生息している生命体が存在する事はかつての地球上で生命が育まれた時代に思いをはせると,決して不思議な事ではない事がわかります。

様々な分野のサイエンティストとともに

 同じ研究分野にとどまらず,火山学者,地質学者,化学者等の研究者との垣根を取り外したお付き合いは世界中,多岐にわたりました。その中には化学反応だけでは解明できない「微生物が関与した物質循環」が関与していたり,「pH1以下の強酸性環境にて生息する微生物」や「常温常圧では作れない物質を作ってしまう微生物の存在」等が確かめられたのも,他分野の先生方とのお付き合いから生まれました。

私の研究テーマである「特殊な環境に生息する生命体」を「温泉に関した発展的な拡大解釈」として理解して下さった上での功績と評価していただいたものと感謝し,自由な研究発想や長期にわたるフィールド調査等の後ろ楯をして下さった東邦大学に感謝いたします。

掲載日 2017年3月2日

研究・調査の様子をほんの少しご紹介します