微生物解説<温泉と微生物の関係温泉微生物

カムチャツカ・カリムスキー火山噴火に伴うカリムスキー湖湖岸の熱水に生息する生命

高温強酸性の温泉に生息する微生物

強酸性火口湖の湖水中に生息する細菌

細菌

Thiobacillus thiooxidans

名称 Thiobacillus thiooxidans MS-A-115 株

(現在は Acidithiobacillus thiooxidans と呼ばれています。)

 一般的に硫黄酸化細菌と呼ばれている一群の微生物の一種であり、本菌は硫黄(硫化水素、イオウ、ポリチオン酸等)を酸化した化学エネルギーでATP(生体エネルギー貯蔵物質)を合成し、その ATP を用いて炭酸同化(空気中の二酸化炭素を材料にグルコースなどの有機物合成をする)を行います。硫黄酸化細菌は化学合成細菌の一種です。

  調査した火口湖は強酸性環境なので、好酸性菌(酸性にて増殖可能)の Thiobacillus を培養する時に用いるpH3 の培地にて30 ℃で培養を行いました。増殖した細菌の性状はグラム染色性が陰性、運動性の鞭毛(写真の矢印A)を一本持つ桿菌でした。

培地
W medium( KH2PO4; 3.0g, (NH4)2SO4; 0.2g, MgSO4・7H2O; 0.5g, FeSO4・7H2O; 10.0mg,
CaCl2・2H2O; 250.0mg, Sulfur; 10.0g, Water 1,000 ml, pH 3.0)

硫黄酸化細菌

T. thiooxidans 他、代表的なものとして Thiobacillus にはT.versutus, T. novelins , T. thioparus , T.intermedius , T. permetabolis があります。
 硫黄を含んでいる温泉に生息しています。(文献;硫黄泉に生息する Thiobacillus の簡便な分離・同定法、東邦大学教養紀要 16: 49-63, 1984)また、硫黄だけでなく鉄を酸化することが出来る T. ferrooxidans も広く自然界には分布しています。また、らせん状の Thiomicrospira や好熱性の Sulfolobus (別記)もこれに属します。

化学合成細菌

生育に必要なエネルギーを無機化合物の酸化によって得ている一群の細菌を指します。硫黄酸化細菌の他、硝化菌と呼ばれる亜硝酸菌(アンモニアを酸化し亜硝酸にする)と硝酸菌(亜硝酸を硝酸にする)、炭酸鉄を水酸化鉄にする鉄細菌、水素細菌がこれに含まれます。(化学同人社発行、独立栄養細菌に詳細なる記載があります)

 

生育場所の例

草津白根湯釜

1990年6月のデータ
  • 直径270m
  • 最大深度24m
  • 水温 15℃
  • pH 1.5

ロシア・カムチャツカ、マリ・セミアチーク火山火口湖

1994年8月のデータ
  • 直径600m
  • 最大深度115m
  • 水温 5.0℃
  • pH1.09
ベースキャンプから火口湖を望む
火口湖の湖岸、小さな沢が流れ込んでいる(雪解け水)
ヘリコプターから見た火口湖
ヘリコプターから見た火口湖
火口壁のピークから火口を望む
中央右側に火口底からわき上がっている硫黄が見える

 

カムチャツカ・カリムスキー火山噴火に伴うカリムスキー湖湖岸の熱水に生息する生命

高温強酸性の温泉に生息する微生物