海藻押し葉工房

海藻押し葉のつくり方

海藻押し葉つくりの実際

ホンダワラやミルの仲間は熱湯処理

 ホンダワラ科植物や、ミルの仲間は体組織がガッチリしているのでなかなか乾燥しません。新聞紙だけの乾燥方法では10日たっても乾燥しきらないものがあります。それどころか、真っ黒なカビが生じたりとやっかいなことこの上もありません。これまでは、ホンダワラの仲間や、ミルの仲間の標本にはカビがつきものとされてきたほどです。それは生きている細胞には保水力があるためです。そこで、これらの体に熱湯をかけて細胞を殺してしまうとあっけないほど短時間で乾燥できるのです。

  ホンダワラ科植物は肉厚で、生のホンダワラ科植物を乾燥するにはかなりの時間がかかるし、台紙に褐色のシミがでて見苦しい押し葉ができてしまいます。これを熱湯で殺すと細胞の保水力が失われて速やかに乾燥するし、褐色のシミも少なくなります。この方法によってカビの生えていないホンダワラ科植物の押し葉をたくさん作ることができるようになりました。
  ホンダワラ科植物の場合には木綿の布をかけるよりも、化学繊維の布をかけるとより有効です。

 台紙に貼り付かない代表的なホンダワラ科植物も、デンプン糊を薄く溶いた液をふりかけておくと、乾燥後に帯紙で止める必要もないほどにしっかりと台紙に貼りつけることができます。ホルマリン浸けのまま長い間放置しておいたホンダワラ科植物の押し葉作りには、この薄く溶いた糊で貼り付ける方法がとても有効です。

 従来、ホンダワラ科植物の押し葉は完全には乾かないものとか、カビが生えるのが当然であると思われていました。
  1mをこえる大型のホンダワラ科植物の押し葉標本はめったに見られなかったものです。ですから、体の一部断片だけとか不完全な押し葉ばかりがたまってしまったものでした。当然のこととして、種の同定はむつかしいという風潮ができてしまったのです。付着部、下の葉、長い茎、生殖器のついた枝と全部そろった押し葉が1枚あると、種の同定はとてもやさしいものになります。
  ホンダワラ科植物の種の分類ができるようになると、磯の生態調査や、流れもの研究もとてもやりやすくなります。熱湯処理したホンダワラ科植物を、通風乾燥することによって容易に乾燥することができるようになり、大きなホンダワラ科植物の押し葉を作れるようになって、ホンダワラに関する知識が急激に増加することを期待しています。

次は 大型海藻の押し葉つくり

| TOPページへ | 海藻押し葉工房目次へ戻る | 前のページへ戻る | 次のページへ |