
中国原産の落葉高木。薬用の他、観賞用として栽培される。春に5弁の桃色花を咲かせ、後に長さ18cmほどの実を付ける。実を薬用とする。生食はされない。
私はカリンの実がどんなものか気になったので食べてみたが、残念ながら美味しく感じられなかった。とても良い香りがして美味しそうだったので齧ってみたのだ。だが、とても固く歯が立たない。何とか齧り取り味わってみると、渋く、ボケた未熟なナシみたいであった。私はどうにか食べられないかと果肉をすりおろしてレモン果汁と砂糖を加え、煮込んでジャムにした。完成したカリンのジャムは結構美味しく食べることができた。
カリンの実の利用でよく知られているのはホワイトリカーで漬ける果実酒やハチミツに漬けたシロップだろうか。
私が小学校低学年の頃、風邪をひくとよくお隣のおばさんがカリンシロップを飲ませてくれたのを覚えている。カリンの実の輪切りを干し上げて煮出し、冷ましたものに蜂蜜や水あめで甘味を付け飲みやすくしたものだ。蜂蜜を入れずに飲んだ時はとにかく渋かった!
お隣のおばさんのシロップに私は何度も風邪を治してもらった。カリンは喉の痛みに効くとされるが、私の体は単純だったのか、そのカリンシロップだけで喉の痛みだけでなく風邪の治りがとても早かったように思う。喉の痛みさえなくなれば私の風邪は治ったも同然だったのかもしれない。お隣のおばさんには本当に感謝である。後に、それはカリンではなくマルメロだったことがわかったのだが・・・。
カリンは実もの盆栽としても知られている。木肌が剥げた様子が独特であり、美しさも感じる。大きな実も見応えがある。実に対して樹が小さいとアンバランスになるが、それもまた魅力でカリン盆栽は人気が高い。私はたまに盆栽展を見に行くことがあるが、そこに展示されている実生カリンの盆栽は継ぎ目が無くとてもきれいな芸術作品である。
(カリン/バラ科 2024年10月.記)