キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達

理学部I号館周辺(2)

フヨウはアオイ科の落葉性樹木です。成長が早くて丈夫ですが強風に弱く枝が折れたり根こそぎ折れたりします。夏休みが終わってキャンパスに学生達が帰ってくる頃がもっとも花の美しい時です。ピンクの花は、咲き始めの朝より夕方までに次第に赤さを増してきます。翌朝には真っ赤になってしぼんでしまいます。たった1日の花の命を哀れに思うか、いさぎよいと思うかですね。雄蕊が雌蕊を包み込むように筒になっているのがこの科の特徴です。

 メディアセンターの前のイヌマキのそばにアオイ科のスイフヨウが植えてあります。まだ、小さな木ですが、3年もすれば大きくなって夏にはたくさんの花を咲かせてくれることでしょう。咲き始めはあくまで白く、翌日は真っ赤になっています。昨夜相当にお酒を飲んだことだろうということからスイフヨウす、なわち酔芙蓉と言われます。花は芙蓉が一重なのに、スイフヨウは半八重です。

 イヌエンジュはマメ科の落葉性樹木です。葉は羽状複葉です。木肌がスベスベツヤツヤとしています。葉を落とした冬の方がこの木肌のツヤが増します。この木に夏はカナブンが集まって来て樹液を吸っています。最盛期にはカナブンの木になってしまいます。

 となりに大きな照りのある葉をつけるモクレン科のタイザンボクがあります。多くのモクレン科植物が落葉性なのに、タイザンボクは常緑です。葉の縁にきょ歯はなく、葉のうらには褐色の綿毛を密生しています。6月〜9月まで、枝の先に直径15〜25pもの白い花を咲かせます。とても香りたかく、道路を歩いていると突如匂ってきて、あたりを見渡すととても高い所に白く咲く花をみることができます。アトランタオリンピックの開かれたアメリカ東南部が原産地です。花が咲いていたらのぞいて見てください。ホウノキの花ととても良く似た構造であることがわかります。

 理学部I号館の階段の登り口にバンレイシ科のポポーがあります。葉は長さ10〜20p、幅5〜10p、倒卵形〜被針形で、きょ歯がなく、薄く、先がすこしとがる。4・5月に濃い紫がかった褐色で、柿の花のような花を咲かせます。10月にアケビのような果実をみのらせます。中は黄色く、熟するとあまくかおりよく、熱帯果物のようですが、これもアメリカハナミズキと同じ北米アパラチア山脈の東の平原低地に生育しています。湿地を好み、秋には黄葉してとても美しい木です。1昨年の台風で枝が折れてしまいましたが、まだまだ元気です。

 単子葉植物がこれほど大きくなるのかい!というのがこのバショウ(芭蕉)です。俳諧の芭蕉はこれが生えていた深川の芭蕉庵に住んでいたので芭蕉と名のったのだそうです。特徴的な大きな葉、太い茎、バショウ科の植物でバナナの仲間です。2年目〜3年目の幹の中央から太い花軸を出して紫色の大きな苞に包まれます。この苞の基部に横に並んで黄色い花が咲いています。成熟すると果実は小さなバナナです。果実を割ってみると中に小さな種子がたんさんならんで入っています。花をつけるとその幹は枯れてしまいます。

 中央道路に面して、温室のすみにカバノキ科のイヌシデ、それにアケビ科のミツバアケビがからんでいます。イヌシデも二次林の代表種です。薪炭材として使われていました。

ミツバアケビ

 三ツ葉アケビです。葉は3枚の小葉からなる複葉です。ミツバアケビは蔓植物です。この蔓はしっかりとイヌシデにからみつき、イヌシデの枝の先の先にまでのびています。蔓がからんだイヌシデは光を奪われてさぞ迷惑していることでしょう。
  温室の北側にあるモチノキも、さらにその数株北にあるモチノキも葉はいつも黒く薄汚れています。モチノキにつくアブラムシ(アリマキ)やカイガラムシの排出物に黒いカビが生えてこのような「煤病(ススビョウ)」になるのです。通気の悪い所にはとくに多く発生しますし、メスの木に多く発生します。

 理学部I号館の玄関の両側に並んだ玉状の木は、モチノキ科のイヌツゲです。5〜6mの常緑性低木です。ツゲは葉が対生するのに、イヌツゲは互生しています。キャンパスにはイヌツゲのみでツゲはありません。葉は長さ1〜3p、楕円形〜長楕円形で、濃い緑色、革質、縁にあらいきょ歯があります。下面に黒点があるのも特徴です。良く分枝して葉を密生し、切り込み、刈り込みにも強く、丈夫であることから枝ぶりを愛でる庭木や、垣根に用いられます。イヌツゲよりも葉がひとまわり小さいのが園芸種のマメツゲです。

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▲フヨウ

▲タイザンボク

▲ホオノキ

▲イヌシデ

▲モチノキ

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