キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達

理学部I号館周辺(3)

ハナズオウ(白)

北側の階段下に楕円形〜心臓形の葉をつけた低木はマメ科のハナズオウです。春早くに枝の途中から、幹に直接たくさんの花をつけます。枝そのものが花で飾られます。ここにはピンクがかった赤い花と、白い花のハナズオウを植えてあります。

 隣に同じく春早くに黄色い花を枝いっぱいに咲かせるのがモクセイ科のシナレンギョウです。

 階段の西側にもう一本のハクモクレンを植えました。ハクモクレンの下にグミ科のトウグミの変種のダイオウグミを植えました。

 葉柄の先に扁平なハート形の葉をつけているのはマンサク科のトサミズキです。葉の裏には短い毛が生えているので白っぽく見えます。3月春早く、葉よりも早く5pほどの総状花序を垂れて黄色い花を5〜8個開きます。シナレンギョウトサミズキハナズオウは早春の華やかさを演出する低木達です。シナレンギョウの隣に手のひら大で白っぽい葉を持つのはアジサイ科のタマアジサイです。アジサイは夏の始めに咲きますが、タマアジサイは夏の終わりから秋に咲きます。花序が苞葉に包まれて玉状であることからこの名があります。玉がはじけるように開くと中から薄紫色の中央花とそれを取り巻いて花火のように周辺花が咲きます。

 この一角一面にラン科のシランを植えてありました。種子植物分類学の講義でもっとも進化した分類群で、花の各部が独自に変化し、花弁の一枚が異常に発達して子房転捻をおこしてしまったことや、蕊柱という構造で訪花昆虫の背中に葯をくっつけて花粉を運んでもらうことを勉強します。

 また、I号館の北側一面にアヤメ科のシャガを植えてありました。これでアヤメ科とユリ科の花の違いを勉強したものでした。花のない時のシランやシャガは雑草と思われて、刈り取られて今は1本もありません。キャンパスは植物にとって安住の場所ではないのです。

 ヤツデの葉の指は何本あるでしょうか。どんなに数えても決して8という偶数の指は見あたりません。なぜでしょうか。また、枝の先端部に花序をつけます。これも奇妙な現象です。花序は葉腋に生じるのが普通で、枝の先端部分に花序を生じるとその枝は花の終わりとともに枯れてしまいます。でも、ヤツデは花序を生じた後に、側芽を生じて枝を伸ばします。従ってヤツデの茎は決してまっすぐにのびることはありません。熟すると黒く丸い果実は鳥の好物で、さかんについばまれて種子が運ばれ、林のあちこちにフンとして落とされます。暗い林の林床に大きな葉を拡げたヤツデが見られるのはこういう理由ですね。

 I号館の各階から救助袋がこの中庭に降ろされます。下に大きな木があると引っかかって危険なことからここに植えてあるシナノキエゴノキは何度も何度も切り倒されてきました。でも、常に根本から新たな小枝を生じて生き残ってきました。

 シナノキエゴノキもいずれも薪炭材として使われてきた木です。適当な太さに成長すると適当な高さから切り倒して切り株を残します。するとそこから新たに若い枝がのびてきて成長します。これが適当な太さになると切り倒されるということを繰り返してきたのです。

 ソメイヨシノが咲く頃の夜は、まだとても寒く、ガタガタ震えながら酒を飲む。毛布をかぶりながら大声を上げないと気勢があがらないほど寒いから必死に酒を飲み、アッと言う間に急性アルコール中毒になってしまう。少し待って、エゴノキの花を見ながら酒を飲んだ方が利口である。エゴノキの花もいっせいに咲き誇る。見上げると柄をもって垂れた白い花は安息香を放ち、得も言えぬ美しさである。

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▲ハナズオウ

▲トサミズキ

▲シナレンギョウ

▲ヤツデ

▲シナノキ

▲エゴノキ

▲ソメイヨシノ

 

 

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