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薬草園の世界
東邦大学 薬学部 生薬学教室
小池 一男

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  身近な薬草・薬木を四季おりおりの歳時を交えながらご紹介いたします。

  ※画像をクリックすると、拡大写真をみることができます。

さくら

さくら画像 花見と言えばサクラを見に行くこととなっております。サクラには各地に古い銘木があります。これは稲作と関係があり、昔はサクラには田の神様が宿ると考えられていました。花の咲きかたで、その年の豊作、凶作を占い、その木の根元で豊作を祈り、なおらい(注1)をしたことが現在の花見酒になっております。

 麻酔手術をしたことで有名な華岡清州はさくらの樹皮を皮膚病の治療薬に配合し、十味敗毒湯を考案しましたが、江戸時代には、サクラの樹皮は、魚毒を解毒するとのことで魚、蟹(カニ)、蝦(エビ)などによる蕁麻疹(ジンマシン)の暖解(かんかい)に、一般に使用されてきました。従って金のない人が、安い酒を飲んで顔を赤くし、サクラの小枝を楊枝のようにくわえカツヲにあたったような振りをしたとの話もあります。

 お祝いの席に欠かせないサクラ湯について、明治時代の外人チェンバレンは、「この浸液の芳香はすばらしいが、味はとんだ食わせ物である」(日本事物誌)と言っています。

(注1)なおらい:神祭の後、神饌や神酒を参加者で分かち合い飲食する行事

ぼたん

 ぼたんは、遣唐使によって奈良時代に薬用として国内に入ってきたと考えられています。

ボタン画像 ぼたんは名(牡丹)が示すように、本来は強烈な赤色のものを言います。その他、白やピンクのものもあります。

 日本では花見をいうとサクラですが、中国ではぼたんは花の王で、唐時代には、花見とはボタンの絢爛豪華に咲き誇る花を観賞することでした。漢詩の中にも多く詠われています。

 乾燥した根皮は血行障害を改善し、血行を良くする効果があるため、婦人病にはなくてはならない大切な薬です。

しゃくやく

 しゃくやくは、古名をエビスグスリといい出雲風土記に記載されています。エビスグスリ(夷薬)とは異国から来た薬草のことで、シャクヤクとは漢名“芍薬”の音読みです。

 昔の中国では、シャクヤクはあでやかな花で若い男女の恋の印としてやりとりされたとのことです。根は筋肉が緊張しすぎているときは、これを弛め、弛んでいるときは、これを引き締める働きがあります。

 民間では解熱を目的に使用されました。ヨーロッパではペオニア根といい、鎮痙薬として用いられました。ペオニアはギリシャ神話に出てくる医師・ヘオニンに由来するとのことです。

くちなし

 くちなしの実は熟しても他の果実の様にはじけないことから、くちなしと言うとの説があります。

クチナシ画像 漢名の梔子の“梔”は、口が小さく楕円形をした一種の酒壺のことで、実の形が似ているところから梔子と呼ぶようになりました。
 小粒の果実は山梔子といい、消炎、鎮静、止血に使用され、庭などに植えられたものから採取された果実は大粒で、もっぱら黄色の染料として重宝がられました。
 色の手帳には、「クチナシの実で染めた濃い黄色」また、一般に、「やや赤みを帯びた濃い黄色。くすんだ黄。」とあり、いくぶん赤みを帯びた黄、いわゆるかぼちゃ色です。

 ※文章・写真は磯東洋医学研究所の鈴木堯先生の提供によるものです。