キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達

体育館〜事務室〜中央道路沿い

ホオノキ

体育館に近く、大きな葉の樹はモクレン科のホオノキです。特徴的な大きな葉は倒卵形〜長楕円形で、長さ20〜40pもあります。柄があり、へりは円く、先端は短く突出しています。葉の表は濃い緑色で、裏面にはワックスを分泌し白く見えます。この大きな葉を集めて魚屋さんに売りにいったものです。魚屋さんではこれに魚を包んでワラで縛ってくれたものです。大きな冬芽が見えます。この冬芽の中には、葉や花の原器がすべて作られています。枝の先に直径15〜20pのクリーム色がかった白い大きな花を開きます。花弁は9枚あり、花弁が開くに従って中の雌蕊雄蕊が見えてきます。中央に多数の雌蕊が密に螺旋状に固まり、太い筆の穂のようです。その下にやはり多数の雄蕊が螺旋状に配列しています。雄蕊は中華料理を食べるレンゲを小さくしたような形で、基部は鮮やかな紅色をしています。上部のへりが葯です。花部の螺旋状配列、多数の雄蕊、そして花糸のない雄蕊の形態はモクレン科の特徴で、これらの構造は古い花の特徴をよく残しているものです。果実は太い筆の穂状の雌蕊の一部屋一部屋に形成され、熟すと部屋は開裂して中に2個の種子がのぞきます。種子は鳥に好まれ、林の中に散布されます。全国の林の中に見られ、大きな葉を見て遠くから認識できる木です。

 すぐ近くにある、厚く照りのある葉をもつ常緑の小高木はスイカズラ科のサンゴジュです。果実は房になって垂れ下がり真っ赤に熟します。鮮やかな緑色の照り映える葉に、サンゴのように真っ赤な果実をつける房は、よく目立ちます。千葉県以南の暖かい地方に自生し、また民家の周囲に風よけに植えられている。

 サンゴジュの後ろにモチノキ、さらにその後ろに灰色の幹で、古い幹部では皮がかさぶた状にはげ落ちる木があります。ニレ科のムクノキです。葉は互生し、薄く、へりに鋸歯があり、先はとがっています。葉をとってさわるとザラザラしています。秋にこの葉を集めて乾燥して保存し、木地(キジ)を磨くのに使いました。目のこまかい紙ヤスリとして使われています。夏から秋に、直径1pに満たない黒く丸い果実がみのります。木に登り、この黒く色づいたこの果実を採って食べたものです。甘く、おいしいけれども、とても実の痛みがはげしくて店頭にならべることができません。木登りの得意な子供だけが食べられた果実なのです。ムクノキと背中合わせにクロマツが生育しています。隣で枝垂れているのはヤナギ科のシダレヤナギです。日本の景色はヤナギぬきには考えられないほど、自然ではヤナギの仲間が多いのです。キャンパス内ではイヌコリヤナギシバヤナギがたくさん生えていました。

 隣は長い葉柄をもったハート形の葉をしたシナノキ科のシナノキです。葉は互生し、6月に葉腋から長い柄のある散房状集散花序をつけます。1枚の苞葉をつけ、この上に花序をのせる。花は淡い黄色である。枝を折り取ろうとすると以外にも簡単には折れない。ためしに枝先をつかんで太い枝の方にグッと曲げてもポキリと折れることがない。よくしなう木である。だからシナノキなのだよ。 このコーナーには他にバラ科のハナカイドウオオシマザクラ関山八重桜ソメイヨシノユキヤナギや、ミズキ科のミズキ、ユキノシタ科のバイカウツギなどがあります。

 事務の入口の左右にソテツを植えてあります。千葉県より南の暖かいところに生育する常緑樹です。樹とはいっても茎には年輪はありません。円柱状の太い茎の頂から羽状複葉を展開しています。濃い緑色で、質はかたく、小葉の先端は尖っています。裸子植物で、種子形成時に精子が観察されることはよく知られていることです。

 ここのソテツはすべて雄株です。何年かに1度、大きな穂の花をつけます。

 もう一度中央道路に帰ろう。左の角に直径40pほどもある木はニレ科のエノキです。葉は互生し、広卵形〜楕円形で左右不同で上部にきょ歯があります。葉裏を見ると3本の葉脈が目立ちます。これがエノキの特徴です。エノキは国蝶のオオムラサキの食草です。この木にはオオムラサキが訪れたのを見たことはありませんが、夏休みの暑い間、コガネムシがとりついていることがあります。

 道路を横切ると、掲示板の上にソメイヨシノが枝を大きくひろげています。日本の春はソメイヨシノに酔いしれる。樹の枝という枝に、とにかく花を飾り立てる。香りもない大人げない花である。ふだん奥ゆかしさと貧しさを愛でて「侘びさび」を好む日本人が恥も外聞もなく気違いになる春の一時は、ソメイヨシノのせいである。オオシマザクラエドヒガンとの雑種で、花は咲くけれども果実をつけない。だから挿し木や取り木によって増やす。すなわち、世界中のソメイヨシノはたった1本の親木から分けられたクローンなのです。自生はないすべてが栽培品なのです。これは驚くべきことですね。日本の植木業者の腕のたまものと言ってよいでしょう。 このように、サクラは日本人のもっとも好む木で記念樹としても人気があります。

 しかし、アメリカシロヒトリもとてもこの木を好むのです。夏にソメイヨシノの葉を食い尽くし、木の下はアメリカシロヒトリの排出物で赤茶色に染まります。秋には、紅葉する葉もないままに枝だけが残ってしまいます。秋の春と同じ気温になる頃に、ソメイヨシノにチラホラと蕾がついて狂い咲きを始めます。また、花の時に上を見上げると、クルリと湾曲して葉だけを生じた枝を見つけます。あるいは、どこかの枝が特別に太り、そこからも葉だけを生じた枝を密生するところを見つけることができるでしょう。これはサクラの病気で天狗巣病(テングスビョウ)といいます。見つけたら早めに枝を切りとってやりましょう。サクラの木を長生きさせようと思ったら手入れこそが何よりも大切です。

 ソメイヨシノの花が散ってしまい、すっかり葉桜になった頃に真っ白い花を咲かせるサクラが教養一号館の南側にあります。薫る花をもつ「匂桜(ニオイザクラ)」で、十文字という品種です。

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▲ホオノキ

▲シナノキ

▲ハナカイドウ

▲オオシマザクラ

▲ユキヤナギ

 

 

 

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