キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達

教養一号館〜メディアセンター

教養一号館の東西の角に高さ10mを超える常緑の高木はヒノキ科のビャクシンです。まっすぐに天に向かってのびるというよりも、燃え立つ炎のようにくねってのびています。もともとは海岸近くに自生する高木です。海からの強い風にさからうことなく、幹はまっすぐにのびずにsねじれて生長します。イブキタマイブキカイヅカイブキはすべてビャクシンという種に含まれます。これらビャクシンの仲間は、梨の赤星病菌の中間宿主です。梨の葉に寄生して大きな被害を与えます。ですから、市川市、船橋市の北部、松戸市、八千代市などの梨の産地では植えてはいけない樹となっています。


▲メディアセンター入り口付近

  教養一号館からメディアセンターに向かうと、メディアセンターへの階段の左側にツバキ科のオトメツバキ、右側にモクセイ科のヒイラギ、もすこし右にイチイ科イチイの品種のキャラボクがあります。オトメツバキはピンク色の花弁を密に重ねた八重の花が特徴です。ふくよかなやさしい乙女を感る花です。数あるツバキの品種の中でも秀逸といわれるものです。ツバキの木は生長が遅く、直径1mをこえる木は見かけません。キャンパスでもっとも老齢な木はこのオトメツバキと思われます。おそらく120才はゆうに超えた古木です。八重なので種子はできません。永遠の乙女なのです。ことしも枝が垂るほどに花をつけています。階段側に伸びた枝が、枝の重みでさがってしまいました。この枝のもとの方に光が当たるようになり、これらの枝から新たな枝を生じて花をつけています。まだまだ元気な木なのです。私達は親愛をこめてこの乙女椿を婆椿とよんでいます。この「乙女椿を見て頑張る」という人が多く、花の時期に訪ねてくる卒業生もいます。東邦大学習志野キャンパスになくてならない木なのです。

 ヒイラギの葉は厚く、かたく、表面にはつやがあります。縁にはするどく尖ったきょ歯があります。この大きなトゲがこの植物の特徴です。節分の時に、ヒイラギの枝を折り取って、目刺しの頭を通して玄関先にくくりつけておく魔除けは、豆播きで追い払われた鬼が、玄関のヒイラギにぶつかって2度痛い目にあい、目刺しの強い臭いに二度と入ってはこないことを希うものです。10月に花をつけます。花はとてもよい香りを放ちます。果実は翌年の7月頃に黒く熟します。

 キャラボクの枝は天に向かって直立するのではなく、斜上します。時に横にはうこともあります。曲げに強く、枝をためて盆栽仕立てにしたり、凝った枝ぶりの庭木として好まれます。長さ1〜2p、幅3〜5oの厚い葉を密に生じます。刈り込みにも強いことから垣根樹木としても有用です。メディアセンター前のコンモリとしたキャラボクは雄の木です。中央道路の縁に作った小さな植え込みにもこのキャラボクが使われています。花は春に咲き、9月〜10月に果実を実らせます。米粒ほどの種子のまわりを、おわんのように仮種皮が取り囲んでいます。種子は有毒ですが、赤い仮種皮はとろりと甘くおいしい。

  9月の半ば頃、ヒイラギの木の下、また、キャラボクの木の下に真っ赤なヒガンバナ科のビガンバナが咲きます。葉を出す前に、突如花茎を伸ばして頂きにユリのような花を開くのです。ヒガンバナは球根でふえます。日当たりのよい土手や斜面を好み、次々と球根を増やして地面を覆い、それぞれの球根から花茎をのばすので、ヒガンバナの群落は真っ赤なジュウタンとなります。美しいと思う人とあまりの原色な赤を嫌う人がいます。また、なぜか墓地に多いことから嫌う人がいます。キャンパスでもこの花を嫌うオバさんがいて、この花を徹底的に刈ってしまいます。キャンパスのヒガンバナは、細胞分裂の観察材料として八千代市桑納の墓地から採集移植したものです。キャンパスはヒガンバナにとってはとても住み易い所らしく、どんどん増えています。花が終わって花茎が倒れたころ、球根の真ん中から左右にスイセンのような葉をのばしてきます。秋になって多くの夏草が枯れた頃に葉を伸ばして冬の太陽光を独占し、春の到来とともに夏眠に入ります。タンポポと似た生活形を持つ植物です。2002年にはこの一角に赤いヒガンバナ、黄色いヒガンバナ、肌色のヒガンバナを植えた人がいました。それはそれは見事なヒガンバナの見本園のようになったのです。ところが、ヒガンバナを嫌う人がこんなところにヒガンバナを植えてはいけないと言い出したのです。縁起でもないという人達の意見が通って、この一角からヒガンバナは駆逐されてしまったのです。

 まだ植えて間もない木があります。ハート形のやわらかな緑色の葉がかわいらしい木です。カツラ科のカツラです。まっすぐにのびて大きくなると10mをこす大木となります。2004年に岩手県山田町から掘りとってきたもので、すこやかにのびてくれるといいですね。

 オトメツバキの前には3株のタニウツギがあります。まだ芽生えですが、低木に成長し、2、3年後には3mほどにのびて夏にはピンクの花を房状につけてくれます。ラッパ状の花をひっぱってとって、花の根本を吸うととてもおいしい蜜の味がします。

 オトメツバキのさらに左側の、高さ10mほどの常緑樹はマキ科のイヌマキです。葉は長さ10〜15p、幅5〜12o、扁平な線形〜皮針形で互生状螺旋状についています。雌雄異株で、メディアセンター前のこの木はメスです。10月に直径1p足らずの青い種子をつけます。種子はワックスをおびて白く見えます。種子の下部に肉質の赤い仮種皮のかたまりがついています。仮種皮は赤く熟すると甘くおいしいものです。キャンパスに棲むドバトの大好物です。枝をためて枝ぶりを整え、庭木として植栽します。千葉県九十九里地方では庭木としてイヌマキの栽培が盛んで、千葉県の県木はイヌマキです。理学部2号館の前にあるイヌマキは雄の木です。

 イヌマキベニバナトチノキにはさまれてバラ科のカリンが植えられています。古い幹の皮は、かさぶた状に剥がれてきます。春、ソメイヨシノが散った頃に濃いピンクの花を咲かせます。秋には大きく黄色い果実をつけます。毎年、数個の果実をつけるのですが、黄色く色着く頃に、誰かに盗まれてしまいます。カリンの果実は、植物形態学として石細胞の観察には最も好適な材料なのですが、いまだにこの木から成熟した果実を手にしたことはありません。黄色くなると、誰かが持ち帰ってしまうのです。カリンの果実は固く、とても生では食べられません。香りがいいので部屋の中に置いておくと部屋中香ってとてもよいものです。これをさいの目に切って、お砂糖を入れて煮ると、あの固い果実がとても柔らかくなります。

 メディアセンター前のイヌマキカリンの前の花壇にはカミヤツデウドタラノキなどのウコギ科の植物が植えられています。巨大な葉、まさに一枚の巨大な葉、葉には綿毛が密生しています。これがカミヤツデです。ヤツデの葉に似ていることと、これから紙を作ったことからこの名があります。カミヤツデの茎は太いものは20cmをこえます。この茎を切ると、中は白い髄が発達しています。この髄をかつらむきにしてのばしたものが紙になり、これを通ぞう紙と言います。かつて、パナマ帽のシンに使われていました。また、水中花にも使われていました。カミヤツデは暖かい所に生育する植物です。千葉県が分布の北限で、ここ習志野キャンパスでも、寒さの厳しい冬には枯れてしまい、翌年春に芽生えてきます。すなわち、年輪のできない巨大な草なのです。

  ウド、春に新芽を食べるあのウドです。ウドは大きく育つ草で、あたかも大きな木のようになっても、秋には枯れる宿根草です。タラノキもやはり春の新芽をつんで天ぷらにする「タラの芽」の木です。明るい林の縁を好んで生育します。

 カミヤツデの葉は単葉で、誰が見ても1枚の葉は大きな1枚の葉です。

 でも、ウドタラノキは複葉です。茎からのびた葉柄から先が1枚の葉です。カミヤツデにもまけないほどの大きな葉です。

被子植物、裸子植物

種子を生じる植物は、種子が心皮に包まれている被子植物と、種子が心皮に包まれていない裸子植物に分けられます。心の皮と心憎い名前の器官は雌蕊の壁のことで、柱頭・花柱・子房壁からなります。柱頭に付着した花粉は、この心の皮の中を通って胚珠にまで到達します。被子植物は重複受精をすること、幹に導管を持つことなども特徴です。

木本、草本

木のことを樹木、分類学ではこれを木本(モクホン)とよびます。木は地上に出ている部分が木質化して何年も枯れずに生き残るものです。木本に対して草本(ソウホン)といい、草のことです。草には地上にでている部分が1〜2年で枯れてしまう植物(多年生草本)、植物全体が1〜2年で枯れてしまい、種子から新しく芽がでてくる植物とがあ
ります。キャンパスに生育する草の寿命は以外に短く、展葉し、花を開いて果実を実らせると直ぐに枯れてしまいます。およそ3〜6ケ月で草は枯れてしまいます。

 ウドの植えてあるところに、つる植物のセンニンソウがあります。

 また、タラノキの下には、ジンチョウゲ科のミツマタがあります。枝振りを見ると、どの枝も三叉状に分枝していることがわかります。すなわち三つ叉、ミツマタなのです。ミツマタはジンチョウゲ科の植物です。

 メディアセンターの会議室棟の前のサクラはオオシマザクラです。

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▲イチイ

▲オトメツバキ

▲ヒイラギ

▲タニウツギ

▲イヌマキ

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